なぜ渋野日向子は3年前Vの全英女子OP初日で単独首位発進に成功したのか…マレット型パターの強気パッティングに強風対策
4月最終週のパロスバーデス選手権を皮切りに、一時帰国して出場した日本ツアーのブリヂストンレディスを含めて、出場した8大会で6度の予選落ちを喫した。6月のKPMG全米女子プロでは予選を通過するも、3日目を前に体調不良で棄権している。 前週までのスタッツはフェアウェイキープ率が78.79%で34位、パーオン率が70.47%で48位なのに対して、平均パット数は30.51で116位に低迷していた。プロテストに合格した2018年7月以降は、パターをそれまでのマレット型からピン型に変更。全英制覇の実績を残した渋野は、気分転換を兼ねて再びマレット型を手にした。 連覇を期待された2020年大会の苦い記憶も、パター変更を決断させた。 強風に悩まされたスコットランドのロイヤルトルーンGCで、渋野は通算12オーバーで予選落ちした。このときに多くの選手がマレット型を使い、風に左右されない、安定感のあるパッティングを繰り出していた。今大会の会場となるミュアフィールドも、2年前と同じ海沿いのリンクスだった点もパター変更を後押ししたはずだ。 前日のプロアマ戦で18ホールを回った渋野は、実はコースに対してネガティブなイメージを抱いていた。時間の経過とともに強まり、場合によっては吹き荒れる海風に「全部難しいけど、距離感をつかむのが特に難しい」と警戒感を強めていた。 しかし、初日はフェアウェイキープ率が85.71%、パーオン率が83.33%とともに高い数字をマークした。ミスショットはグリーン右のラフに打ち込み、2つ目のボギーを叩いた14番(パー4、424ヤード)の2打目ぐらいだった。 最大のテーマとして掲げていた「風とお友だちになる」をほぼ完璧に実践。警戒していたバンカーにも一度も打ち込まなかった初日を、渋野は「距離感がすごく合っていたし、自分でも不思議な感じがしました」と振り返っている。 「ライもまっすぐなところがほぼなかったんですけど、そのなかでも上手く対応して、怖がらずにしっかりと振り切れていた。それが結果につながったのかなと。ドライバーもよく振れていたというか、ボールがよく転がってくれました」 パッティングで好感触をつかんでいたからこそ、ショットもミスを恐れずに思い切り打てる相乗効果が生まれた。至高のハーモニーが続けば、シンデレラストーリーの再現への期待も高まってくる。しかし、メジャーの舞台はそれほど甘くはない。 初日は渋野を含めた午前スタート組が上位を占め、午後スタート組のほとんどはスコアを伸ばせなかった。ますます強まった風がショットを狂わせ、ただでさえアンジュレーションに富んでいるグリーンをさらに高速化させたからだ。 現地時間午後零時16分(日本時間5日午後8時16分)にスタートする2日目へ、渋野は覚悟を決めるように、それでいて笑顔を浮かべながらこう語っている。 「1日で何とか6個の猶予をいただいたので、それを減らさないように、明日もしっかり頑張りたいと思います」 6個の猶予とは、今季のベストスコアとなる「65」で手繰り寄せた6アンダーを指す。自身の現在地を「まだ調子がいいとは言えない」と語り、ラウンド中に何度か見た、自身の名前が一番上にあるリーダーボードに「こんなところにいるの、珍しいし懐かしい」と無邪気に笑った渋野は、何が起こっても動じない自然体で2日目に臨む。