<農協改革> JA全中は何が「特別な組織」なのか? 早稲田塾講師・坂東太郎のよくわかる時事用語
農協改革の議論が活発になっています。安倍首相が抜本改革を打ち出し、通常国会での農協法改正案提出を目指しているからです。焦点は、全国農業協同組合中央会(JA全中)の一般社団法人への転換と、JA全中の地域農協への監査権限の廃止。ただこれにはJA全中が猛反発しています。1日には農林水産省がJA全中の「廃止」案を提示したと報じられました。JA全中とはいったいどんな組織なのでしょうか。 【図表】そもそも農協ってどんな組織?
農協法で「特別民間法人」と規定
戦後の農地改革で地主制が原則廃止され、それまで小作人と呼ばれた土地を借りて農業を行っていた者の多くが自作農になりました。日本は農地が少なく農業者も小生産者にならざるを得ない宿命があります。そのため経済的弱者に陥りがちで、例えば買い叩かれるなどする危険があります。そこで1947年に農業協同組合法(農協法)が作られ、規模を拡大し助け合って共同購入や協同販売などを行い始めました。 構造は大きく三段階に分かれます。最も身近なのは市町村や地域単位で存在する「地域農協」(●●市農業協同組合などと名乗る)で全国に約700あります。二段目が都道府県段階で三段階目は全国。主に3つの事業を手がけます。経済事業が全国農業協同組合連合会(全農)、信用事業が農林中央金庫(農林中金)、共済事業が全国共済農業協同組合連合会(全共連)です。 全農は肥料や農薬など生産資材の共同購入・農産品の加工・流通から販売まで手がけます。農林中金はいわば銀行で全共連は生命保険や損害保険に該当します。他にも輸送業や病院、介護、旅行まで農協グループでできない機能はないというマンモス組織に成長しました。 その頂点に君臨するのが全国農業協同組合中央会(JA全中)です。農協法に定めがあり、とはいえ国の機関ではなく(民間である)、したがって国の出資や役員任命がないという「特別の法律により設立される民間法人」と位置づけられます。特別民間法人には、前述の農林中金(農林中央金庫法)や主に中小企業の声を届ける経済団体で「簿記検定」でも知られる日本商工会議所(商工会議所法)などがあります。