【陸上】男子20km競歩世界記録保持者・鈴木雄介が現役引退 「感謝してもしきれない」 19年世界選手権金メダリスト 今後は指導者に
富士通は7月23日、男子20km競歩世界記録保持者の鈴木雄介が7月末日をもって、現役引退ならびに退職することを発表した。 「波乱万丈な競技人生」 鈴木雄介の引退コメント全文 鈴木は石川県辰口町(現・能美市)出身の36歳。小学生の時に、兄が陸上のクラブチームに入ったのをきっかけに、陸上を始め、最初は長距離を専門に活動。競歩が盛んな地域だったこともあり、中学2年から専門的に競歩の練習を始め、3000m、3km、5000mで日本中学最高記録を残すなど、早くから才能を開花させた。 小松高では1年からインターハイで2位に入り、3年時には日本一に輝いたほか、05年世界ユース選手権と翌年の世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得。国際的な活躍を見せていた。世界選手権は09年ベルリン大会で初出場を果たしてから、11年テグ大会で8位に入賞。12年ロンドン五輪にも出場している。 15年全日本競歩能美大会では今も世界記録として残る1時間16分36秒の世界記録を樹立。五輪実施種目では日本人男子としては50年ぶりの快挙でもあった。 だが、以降は恥骨のケガやオーバートレーニング症候群などに苦しむようになり、15年8月の北京世界選手権に出場するものの途中棄権し、その後は長く競技会から離れることも多くなった。 それでも18年5月に競技復帰すると、翌19年の日本選手権50km競歩で3時間39分07秒の日本記録(当時)を打ち立てて優勝。さらに、9月のドーハ世界選手権では競歩史上初の世界大会金メダルを手にした。 同大会の成績により2020東京五輪の代表にも内定したが、開催が延期された21年にコンディションを理由に出場辞退を発表している。 その後は23年の東日本実業団で競技に復帰。9月の全日本実業団選手権10000m競歩で7位に入ったのが最後のレースだった。 鈴木は引退にあたり「いつまでも競技を続け、富士通陸上競技部に残りたいという気持ちも強くありました。一方で以前から、引退後は指導者になりたい、お世話になった陸上界や競歩界へ自分の経験を還元したいと考えており、2月の日本代表選考競技会にも出場できなかった現実を鑑み、引退して次の道に進むことを決意しました」と自身の気持ちを発表。 「競歩ブロックはもちろんのこと、多くの種目で世界に活躍する選手がいる環境で、切磋琢磨しながら活動できたことは、とても刺激的で幸せな経験でした」と綴り、印象に残ったレースとして、世界記録を樹立した全日本競歩能美大会と金メダルを獲得したドーハ世界選手権を挙げた。 身体の状態から引退レースなどを行う予定はなく、今後は新潟アルビレックスランニングクラブに所属し、指導者としての道に進む。今後、競歩の強化を始める新潟食料農業大のコーチとして活動することを明らかにした。
月陸編集部