トランプ&バンスのスマホデータまで狙われた、中国政府系ハッカーの邪悪な攻撃の規模はAI駆使し倍々ゲームで拡大中
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 新手の中国系ハッカー「ソルト・タイフーン」 [ロンドン発]「ソルト・タイフーン」と名付けられた中国系ハッカーグループが米共和党大統領候補ドナルド・トランプ前大統領と同副大統領候補J・D・バンス上院議員の携帯電話データを標的にしていると米紙ニューヨーク・タイムズ(10月25日付)が報じた。 【写真】今年8月6日、シンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港に到着し、スマホで会話しながらタラップを降りるJ.D.ヴァンス上院議員。こうした通話内容も「ソルト・タイフーン」のターゲットになっているのか… トランプ、バンス両氏が携帯電話の通話やメールで誰と連絡を取り合っているのか、どれだけ頻繁に、どれぐらい長く話したのかがリアルタイムでつかめれば、貿易戦争や台湾問題で米国と対立する中国当局にとって通話内容が分からなくても非常に貴重な情報になる。 「ソルト・タイフーン」は米大手電気通信事業者ベライゾンやAT&Tのシステムに侵入し、トランプ、バンス両氏のほか民主党の大統領候補カマラ・ハリス副大統領の選挙運動員や上院院内総務チャック・シューマー上院議員ら米議会有力者もターゲットにしていた疑いがある。 米連邦捜査局(FBI)とサイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁(CISA)は同日「米国政府は中国の関係者による商業通信インフラへの不正アクセスについて調査している。被害を受けた企業に技術支援を提供するとともに迅速に情報共有している」と発表した。
■ インターネットサービス・プロバイダーにも侵入 米大統領選の投票日が近づく中、中国やロシア、イランのハッカーグループは動きを活発化させている。こうした脅威を軽減するために、米国政府各機関は同盟国や業界とも連携して民間通信セクター全体のサイバーセキュリティーを強化している。 米紙ウォールストリート・ジャーナル(9月26日付)も「ソルト・タイフーン」がここ数カ月、機密情報を求めて米国のインターネットサービス・プロバイダーのいくつかに侵入したとスクープした。「ソルト・タイフーン」は中国当局とつながっているとみられる。 ケーブルやブロードバンドのプロバイダーのインフラ内に足場を築き、通信事業者が保存するデータにアクセスしたり、サイバー攻撃を仕掛けたりする。ネット上のデータが通る経路を管理するシスコシステムズのルーターやマイクロソフトのシステムに不正アクセスした疑いがある。 米国ではハッカーグループに気象現象にちなんだ名前をつけている。中国を拠点とするハッカーは「タイフーン(台風)」、イランによる活動は「サンドストーム(砂嵐)」、ロシアによる活動は「ブリザード(吹雪)」と呼ばれている。