【巨人】0―0延長12回、吉川尚輝サヨナラ打「絶対打ってやろうと」2度目の月間2本は王貞治以来球団2人目
◆日本生命セ・パ交流戦 巨人1x―0ソフトバンク=延長12回=(29日・東京ドーム) 【動画】やったぜ!吉川尚輝がサヨナラタイムリー! 巨人が今季3度目のサヨナラ勝ちでソフトバンクに雪辱し、交流戦初勝利を挙げた。ドローも見えた延長12回1死二塁から、吉川尚輝内野手(29)が右越えに今季2度目の劇打を放ち、今季チーム最長4時間29分のゲームに終止符を打った。先発の堀田賢慎投手(23)が6回途中5安打無失点と好投。リリーフ陣も踏ん張って8投手の無失点リレーを完成させ、8番手の平内龍太投手(25)が2年ぶりの白星を手にした。貯金を2に戻し、首位・広島との2・5差をキープした。 両手に残った最高の感触が打球の行方を教えてくれた。吉川は振り抜いたバットを投げ出し、右手を突き上げながら一塁ベースへ走り出した。「抜けると思ったので、うれしかったです」。打球は右翼フェンスに直撃し、今季チーム最長となる4時間29分の試合に決着をつけるサヨナラ二塁打に阿部監督もバンザイ。ヒーローは二塁ベース付近でナインから歓喜のウォーターシャワーを浴びながら、最後まで勝ちを信じた4万1452人のファンと、最高のフィナーレ、そして交流戦1勝を分かち合った。 0―0の延長12回1死二塁。ソフトバンク守護神・オスナの初球の外角高め153キロ直球を捉えた。無死から丸が左前打で出塁し、代打の小林が犠打を決めてつくった最後のチャンス。8回2死満塁で凡退していただけに「丸さんが出て誠司さんがつないでくれて、絶対打ってやろうという気持ちで打席に入りました」。8人の継投で12イニングを無失点で切り抜けた投手陣の力投にも応えた。 5月は2本目のサヨナラ打。4日の阪神戦(東京D)は、延長10回に中前打で勝負を決めた。この打席には裏話がある。初球の変化球を空振りし、バットを指1本分、短く持ち直して2球目の内角直球をコンパクトに振り抜いた劇打だったが、実は「バットを短く持ってはどうか」と、ベンチからサインを通じた“提案”を受けてのものだった。試合後、阿部監督は「最後打って決めたのは素晴らしいけど、人に見える工夫をもっとしてほしい」と、あえて厳しい言葉で自覚を促した。 翌日の練習前、吉川は「目に見える工夫」の必要性を、二岡ヘッド兼打撃チーフコーチと話し合った。「いろいろ試しながらやっています」。以降は、相手投手によってタイミングの取り方、バットの握りを臨機応変に変える姿が、これまで以上に目を引く。指揮官は「目に見える工夫をしてくれているのはベンチから見ても分かる。対ヘルナンデス(8回2死満塁で遊ゴロ)の時なんか、めちゃくちゃバットを短く持って、何とかしようというのが見えた。そういうのを野球の神様が見てくれていたんじゃないか」とベンチの意をくんだ姿に目を細めた。 今季2度目の猛打賞。4月28日のDeNA戦(横浜)から3番に入り、新打順では100打数30安打で打率3割と、中軸の役割を果たしている。「ホームランを打てるバッターではない。本塁打を打てる打者はたくさんいるので、いろいろ考えながら、これからもやっていけたら」。たくましさを増した背番号2が、巨人を力強くけん引する。(内田 拓希) ◆記録メモ 吉川(巨)が5月4日の阪神戦に次いで今季2度目、通算5度目のサヨナラ安打。今季は5月だけで2本目だ。球団で月間2度のサヨナラ安打は吉川自身が記録した20年9月以来で、自身2度目となる。月間2度のサヨナラ安打を2度は、王貞治(巨)が70年5月と75年5月、若松勉(ヤ)が73年7月と77年6月、池山隆寛(ヤ)が88年10月と91年8月、ハウエル(ヤ)が93年5月と7月、田中幸雄(日)が95年4月と98年6月、井口資仁(ダ・ロ)が99年9月と09年4月にマークしており、吉川が7人目。巨人では王に次いで2人目だ。
報知新聞社