内定取消しに悩む学生。一方で退職代行の台頭も…企業とのミスマッチについても社労士が解説
内定取消しを行った企業の状況
経済環境や社会環境により内定取消し数は大きく変わりますが、企業の状況にも大きな影響を受けます。 ●業績不振の企業で内定取消しが発生 内定取消しの理由(2023年度卒業者)は次の通りです。 ・企業倒産:1事業所 ・経営の悪化:13事業所 ・別会社移行:3事業所 ・その他:8事業所 その他を除くと、内定取消しの大半は企業の業績不振によるものです。 また、内定取消しした企業を規模別に見ると次の通りで、小規模の企業が内定取消しの8割を占めます。 ・従業員300人以上:4事業所 ・従業員100人以上299人以下:1事業所 ・従業員99人以下:20事業所 内定取消しには企業業績や企業規模が大きく影響するため、就職活動時にきちんと確認しましょう。 ●内定取消し企業に対する法律上の制約 内定を取消す場合、企業は事前に公共職業安定所に連絡することを義務付けられています。 業績不振などやむを得ない事情の有無を確認するためです。 また、2年度以上連続して内定取消しした企業などを厚生労働大臣が公表して、企業が安易に内定取消しを行わないように牽制しています。 毎年内定取消しが発生する一方で、無事に入社した人の早期退職も増えています。 次章では、入社初期の退職状況やその原因について解説します。
入社初期の退職状況
入社直後の退職者の増加や退職代行の利用などが話題となっていますが、実際の入社初期の退職状況はどうなっているのでしょう。 厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」をもとに解説します。 ●大学卒業者の就職後3年以内の離職率は32.3% 2020年3月に大学を卒業した人の3年以内の離職率は32.3%です。 中学卒業者や高校卒業者よりは低いですが、およそ3人に1日が退職する状況です。 就職先の企業規模をみると、従業員29名以下の企業の離職率が50%近くであるのに対し、1000人以上の企業は約半分の26.1%にとどまります。 また、業種別にみると、次の業種で離職率が50%前後と高い状況です。 ・宿泊業,飲食サービス業:51.4% ・生活関連サービス業,娯楽業:48.0% ・教育,学習支援業:46.0% ●早期退職の主な原因はミスマッチ 労働政策研究・研修機構の調査によると、初めて正社員として働いた勤務先を辞めた理由は、男女別に次の通りです。 健康状態や人間関係を退職理由とする人も多いですが、労働条件や仕事内容のミスマッチが原因で早期に退職する人が多いことがわかります。 ・労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった:男性31.8%、女性28.7% ・自分がやりたい仕事とは異なる:男性29.9%、女性23.4% 「採用時の説明と違う」との声もよく聞きますが、大学OBの話や転職情報サイトの口コミなど情報収集に努めてミスマッチを減らすように努めましょう。