初代ファンタ、透明コーラ…山でレアなレトロビン続々発掘の収集家「魅力広まってほしい」
2002年に東京の大学に入学すると、趣味は一気に加速。全国の地元だけで流通するサイダー「地サイダー」を作る零細メーカーを回り「話を聞いたり、古いビンを分けてもらったりしました」。
興味はとめどなく広がった。国会図書館で業界紙を調べるなど知識とコレクションを増やしたが、徐々にリターナブルビンは時代の波から取り残されていく。
「2005年くらいから、商店や零細飲料メーカーが減り、レトロビンの入手が難しくなった」と宮下さん。それにつれ、趣味の活動も下火になっていった。
■狙い目はかつての観光地
しかし5年ほど前、転機が訪れた。子供が大きくなり、趣味の山登りを再開。「すると、山の中に古いビンが結構落ちていたんですよ」と目を輝かせる。
やがて、土の中に戦前のものなど貴重なビンが埋まっていることに気づく。
「昭和40年代くらいまでは、不燃ごみは回収ルートが整備されていない。山などにビンを捨てていたことが多いんです」
特に、「具体的な場所は言えませんが、かつて賑わい、今は落ち着いた観光地」が狙い目。「昔、売店があった周辺には高確率で埋まっています」という。
山ではヒルやマダニに悩まされ、クマの出没も怖い。しかし、「初代ファンタなど大発見の喜びには替えられません」と断言する。
コレクションは増え続けるが、毎晩取り出して見入るようなことは少ない。
「一番好きなのは、見つけるまでのプロセスなのかもしれません」
■ビンの魅力伝える書籍を
Xやブログで活動を報告するうち、全国のレトロビンコレクターとのつながりもできた。「みなさん20代とか結構若い」という。
ビンはメーカーにも資料がほとんどなく、コレクター同士で調べたデータが貴重な資料。夢はビンの魅力やデータをまとめた本を出版することだ。
「昔のジュースを紹介する本はもうありますが、ビンについてのものはない。洗うだけで繰り返し使えるリターナブルビンは、今の時代にあっている。ビンにまつわる、そうした思いをつづった本をいつか出版したいですね」(岡本耕治)