日鉄のUSスチール買収、対中国で日米の経済安保連携を強化-甘利氏
(ブルームバーグ): 自民党の甘利明前幹事長は、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収に関し、鉄鋼輸出国として市場に影響力を持つ中国に日米が経済安全保障上の連携を強めて対抗していくことにつながるとの見方を示した。
党経済安全保障推進本部長を務める甘利氏は3月29日のインタビューで、粗鋼生産で圧倒的なシェアを持つ中国がダンピング(不当廉売)を増加していると指摘。各国と連携して対抗するため、「ここで日米がしっかりタッグを組まねばならない」と述べた。同買収が成功すれば米国への技術移転を伴い、同盟国としての「日米連携のシンボルにもなる」とも語った。
中国による余剰在庫の輸出急増は、鉄鋼市況に変調をきたしている。アジアでは他国のメーカーが価格競争力を維持できず、インドが反ダンピングの関税措置を発動するなど保護主義的な対応を強化した国もある。日本政府は同買収の是非について明確なコメントを避けているが、甘利氏の発言は、市場環境改善には鉄鋼分野でも日米連携の強化が不可欠として、その意義を与党の担当者として訴えたものだ。
甘利氏は中国の不当廉売の背景には、国内で消費しきれなかった鋼材を海外で売ろうとしていることがあると指摘。日米と欧州、インドなど中国以外の鉄鋼生産国が連携して対抗していくためにも、「日米がこの部分で争っている場合ではない」と語った。
日鉄、「強い決意」でUSスチール買収完了させると声明で主張
同買収についてはバイデン大統領が3月14日、USスチールは「米国を象徴する鉄鋼会社」であり、「米国の鉄鋼労働者を原動力とする強力な米国の鉄鋼会社を維持することが重要だ」との声明を出した。全米鉄鋼労働組合(USW)が反対を表明しており、11月の大統領選で支持取り付けを意識したものと受け止められた。共和党のトランプ前大統領は自分が当選すれば阻止すると発言している。
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