国民が検察を応援、正しい姿?自民党裏金問題で見えた「日本の民主主義の弱点」 ジャーナリストの神保哲生さんに聞く
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、東京地検特捜部による捜査が本格化した2023年末、SNS上では「東京地検頑張れ」「裏金議員全員逮捕」といったハッシュタグが拡散されるなど、政治家に対する捜査を市民が応援するような風潮が広がった。 【写真】「供述を変えさせる」地検特捜に狙われる恐怖 証拠改ざん発覚から10年、村木厚子さん
ジャーナリストの神保哲生さんは自民党の裏金づくりを厳しく批判する一方、こうした世論からは「日本の民主主義の弱点が見える」と指摘する。政治に対する国民の怒りが刑事処分への期待に転化することが「危うさ」をはらむ理由について、そして検察を応援する代わりに主権者が本来すべきこととは何か、話を聞いた。(共同通信=西尾陸) ▽国民が官僚の味方、崩れる「民主主義の方程式」 ―今回の事件や改正政治資金規正法に対する印象を聞かせてください。 「改正法は『やってる感』を出しただけで中身は空っぽです。金がものをいう政治風土がある以上、政治家自身が裏金の抜け穴をふさぐことはできないだろうと最初から思っていました。もはや制度を変えればよいということではなく、問題の本質は日本の政治文化そのものです」 ―神保さんは自民党の裏金づくりを厳しく批判する一方で、検察による政治家への捜査に国民が期待をかける状況は「危うさ」もはらんでいると発言してきました。どういうことでしょうか。
「刑事告発を受けた検察はきちんと捜査をして、違法行為があれば、しかるべき処罰がなされるのは当たり前のことです。ただ、政治家に対する処罰を検察に全面的に委ねてしまうのは、民主制の下に生きる市民の姿勢として間違っていると思います」 「軍隊や警察、検察といった『ゲバルト(暴力装置)』を持つ政府は、放っておけば暴走します。民主主義の基本は、市民が選んだ政治家が法律をつくり、政府を統制するということです」 「この方程式が成り立つ前提は『民意の後ろ盾がある政治家が優位に立つ』ということです。しかし、日本ではロッキード事件しかりリクルート事件しかり、官僚機構の一部である検察が世論を味方につけて捜査を行い、政治家は防戦一方になるという構図の事件が繰り返されてきました。政治家が官僚をチェックするという本来の方程式は機能しなくなります」 ▽捜査対象者を「真っ黒」にするメディア ―なぜ国民は検察を応援するのでしょうか。