国民が検察を応援、正しい姿?自民党裏金問題で見えた「日本の民主主義の弱点」 ジャーナリストの神保哲生さんに聞く
「背景にはメディアの問題があると思います。私は、官僚と報道がつくる『官報複合体』と呼んでいますが、メディアは検察への取材で得た情報を基に捜査対象者を『真っ黒』にします。それを見た市民が『手ぬるいぞ、もっとやれ』と検察の背中を押すわけです。そうした状態を容認して処罰感情を刺激するのは不健全だと思います。今回の裏金事件でも、このことが影を落としていました」 ―多くの国民が裏金問題に激しい怒りを感じているのは事実です。民主主義の方程式を崩さずに問題に対処するにはどうすればよいのでしょうか。 「政治資金規正法は『制』ではなく『正』の字を使います。これは資金を制限するよりも、収支を『ガラス張り』で公開して国民の不断の監視と批判の下に置くことを重視する米国法の考え方を踏襲しているためです。この法理は規正法の第1条と2条でも、はっきりとうたわれています。ここには法律違反がないかというレベルの低い話だけではなく、寄付をした企業や団体に有利な政治がなされていないかといった監視も含まれます」
「裏金がものをいう政治は変える必要があります。しかし、日本を良い国にしたければ、国民は暴走の危険性もはらむ官僚や検察に頼るのではなく、正しい選択ができる政治家を選び、監視するしかありません。腐った政治家に引導を渡すのはわれわれ有権者だという自負を持たなければ、ほとぼりが冷めた頃にまた不祥事を繰り返すだけでしょう」 ▽自民党は金権政治の継続を選んだ ―政治資金の透明性を確保するという点では、改正法は課題を残しました。 「改正法は『インターネットによる公表』などといった言葉が一応並んでいますが、それが何を意味しているのか全く分かりません。専門家が膨大な時間をかけて収支を突き合わせることで、やっと不正の尻尾をつかむことができるという今の状況は変わらない可能性があります。本来は、検索とソートができる形でデータ化され、公開されるべきです。そうすれば、報告書をチェックするメディア報道も増えるでしょう。米国には政治資金の監視を担うNPOがたくさんあります」