「せめて最後はゴール切りたかった」落車によるケガで引退した元ガールズケイリン選手の本心
2023年末、ガールズケイリン選手3人が代謝制度により引退した。1期生の白井美早子、2期生の田仲敦子、12期の奥平彩乃の3選手だ。今回は落車負傷により欠場が続き、復帰は叶わず引退した田仲敦子のメッセージを紹介する。
落車に苦しんだ2期生・田仲敦子
昨年末に引退した田仲敦子は、ガールズケイリン2期生として2013年5月に松戸でデビュー。同年12月のいわき平で初優勝を果たした。この優勝以降も的確なレースの読みと追走技術を発揮して車券に貢献し、ガールズケイリン初期を盛り上げた選手のひとりだ。 しかしマーク戦主体のレーススタイルは、常に落車のリスクと隣り合わせだった。2015年12月四日市、2017年10月のいわき平、2019年5月立川と落車に見舞われ、それまでは乗れていた決勝戦から遠ざかってしまった。
オールガールズで気合入れ直した矢先…
思うような成績が出なくても決して気持ちだけは切らさず、レースに参加し続けた。2022年6月末には平塚で行われたガールズケイリン10周年記念レース「ALL GIRL'S 10th Anniversary」を走り、104期の同期生や大勢のガールズケイリンレーサーと旧交を深めて気合が入った。 「2期生でガールズケイリンに入ったときは、ガールズ選手だけの開催なんてできるなんて思っていなかった。開催中はいろんな人と話をすることができて、このままじゃダメだと思った。自分より年上の選手が頑張っているレースを見て刺激が入りました。もう一度頑張ろう、と」 再浮上に向けてスイッチが入った次走の7月高松では予選2走で5、3着。3月防府以来の決勝進出を果たした。平塚で受けた刺激はきっちりと結果に表れた。 しかし最終日の決勝戦で、またも落車。バンクにたたき付けられてしまった。 「特に頭を強く打ってしまった。出血の症状もあったので、しばらく安静にするしかありませんでした」
リハビリに励むも復帰は叶わず
退院後は復帰に向け、少しずつ歩みだそうとした。しかし体は思うように反応せず、田仲を苦しめた。 「脳内出血の影響で右足にマヒが残ってしまいました。2か月ほど入院して、根気強くリハビリも頑張っていたんです。日常生活にはまったく支障がないくらいに回復しました。ただプロスポーツ選手として戦っていくための身体機能の回復には程遠く、引退することを決断しました」 そうして落車したレース以降復帰することなく、2023年末の登録審査制度で代謝(強制引退)となった。 「今は熊本の選手会のお手伝いをしています。歩いたり、普通の生活をするうえで不便なことはないので大丈夫です」と気丈にふるまう彼女だが、志半ばでガールズケイリン界から去ることになり、胸にはやり場のない思いが残った。 「最後のレースが落車棄権で終わってしまったことは悔しいです。せめてゴールは切りたかった…」