米ダウ2万5000ドル超え その背景にある「優しさと強さ」
ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均が2か月ぶりに2万5000ドル台を回復しました。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは、米国株が復調した背景は2つの理由で説明できると指摘します。藤代氏の解説です。
FRBと投資家の間の“合言葉”
米国の代表的な株価指数であるNYダウは2万5000ドルの節目を回復し、12月以降の下落をほぼ全て取り返しました。こうした株価上昇の背景として大きく分けて2つの要素が挙げられます。一つは米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めが終わりつつあること、もう一つは米国経済が依然として強さを保っていることです。本稿ではこれら2つについて解説します。 まずFRBの金融政策は、1月31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文とその後のパウエル議長の記者会見で、明確に方向感が変わりました。FRBは米国経済の力強さを根拠に、2015年末から政策金利(FF金利)の段階的引き上げに着手すると、その後2016~18年の間に合計8回(16年:1回、17年:3回、18年:4回)の利上げ実施し、FF金利(上限)を2.5%まで引き上げました。こうした金融引き締めの効果は、2018年中ごろまでほとんど確認できなかったのですが、2018年後半になると住宅ローン金利上昇によって住宅市場が冷え込んだり、株価や社債の価格が下落するなど、さまざまな影響が顕在化しました。 そこでFRBは、FOMC声明文に「patient」という単語を盛り込むことで、事態の打開を図りました。この「patient」という単語は、投資家とFRBの間でのみ通じる一種の“合言葉”のような存在で、FRBが金融引き締めを急がずに「辛抱強く待つ」という含意があります。これによって3月のFOMCによる利上げ見送りは確定的となりました。その後、利上げが再開されるか、それともこのまま打ち止めになるかは、今後の状況次第ですが、2018年のように3か月に一度のペースで淡々と利上げを進めていく姿勢は明確に変化しました。