阪神淡路大震災、東日本大震災で子どもを失った母2人が絵本制作、息子への想い
「息子の死は離れません。だけど悲しむだけが息子を想うことではないから」―。1月13日に兵庫県西宮市の主婦、たかいちづさん(52)が1冊の絵本を出版した。タイトルは「優しいあかりにつつまれて」。阪神・淡路大震災で命を失った当時1歳半の長男、将くんを想い、生きていれば成人式を迎えたこの年に贈るために制作を決意。東日本大震災で生後8カ月の長男が津波の被害に遭い未だに行方不明という宮城県の竹澤さおりさん(38)との共著で制作した。出版後はテレビなど多数のメディアで紹介され反響を呼んでいる。震災、息子の死と向き合いながら生きる、たかいさんが思いを語った。 <震災3年>「あまちゃん」の“地元”で起きた意識変化
生き返るかもしれない、必死で病院へ
たかいさんは1995年1月17日、夫の仕事の都合で住んでいた山口県から兵庫県西宮市の実家へ帰省。結婚後7年で授かった双子の将くん、長女のゆうちゃんを両脇にかかえ、2階で寝かせていた。同日午前5時46分、激しい揺れとともに2階が崩れ実家が倒壊。1時間後にがれきの中から救出されたが将くんはタンスの下敷きとなり、間もなく死亡が確認された。「生き返るかもしれないという思いで病院に連れて行き、混乱した病院の廊下で自分で必死に心臓マッサージをした、その時の事はあまり覚えていません」。1週間後に山口へ戻り、将くんと過ごした家に戻った時、将くんがいなくなってしまったという悲しい現実を前に寝込んでしまったという。
サイトを開設、将くんを知ってもらう機会に
しばらく明日のことも考えられず、娘と一緒に死のうとも考えた。しかし、成長とともに「ママ大好き」と語りかけてくる娘を見て「生きなきゃいけない」と自分に言い聞かせる日々。カウンセリングにも通った。「将くんがいない時間をどれだけ生きなきゃいけないのか。今の私は、目の前に続く将くんに会うための長い階段のわずか一段だけを上がっただけ。この先の長さを考えると絶望のどん底に落ちた」。 後に、そんな思いを綴ったインターネットサイト「将君のホームページ」を開設。娘の幼稚園では「将くんのママ」と呼ばれず寂しかったが、サイト内ではそう呼ばれることで心のバランスを保てた。後にサイトを見た小・中学校の先生から道徳の授業で使いたいという話しがきた。道徳の副読本にも紹介してもらうことに。それらを使って授業をした修学旅行生が兵庫県に来た時に生徒へ話しをするなど、将くんを知ってもらう機会がうれしかった。