阪神淡路大震災、東日本大震災で子どもを失った母2人が絵本制作、息子への想い
子どもに贈る絵本制作を決意
2011年3月11日の東日本大震災が発生時、テレビの映像に衝撃を受けた。後にNPOの活動で岩手県陸前高田市へのボランティアに参加するも、自分の非力さ、自身の被災時の記憶がよみがえった。子どもを失った人に「自分も同じだから」ととても言えないほどの阪神大震災とは違う被害の大きさを目の当たりにした。しばらく休んでいたカウンセリングも再開するなどショックは大きかった。2012年1月、ゆうちゃんに振り袖のパンフレットが届くようになった。そして続けていたカウンセリング治療の一環で「将来の目標を立てる」というものがあり、その時思ったのが「息子の成人式までに絵本を作ること」だった。「将くんへの想いを形にて成人式のお祝いのプレゼントにしたい」という気持ちと、以前、将くんの死をゆうちゃんに伝えようと「きょうだいの死」を綴った絵本などを探したが見つからなかった経験を思い出しての発案だった。
東日本大震災で息子を失った母との共著で
同じころ、自分のサイトをきっかけに仙台市に住む竹澤さんと出会った。竹澤さんは東日本大震災発生時、宮城県名取市内の実家に当時生後8カ月の長男、雅人くんをあずけたが、両親、祖母とともに津波の被害にあった。雅人君と母はいまも行方不明のままだ。交流を続ける中で竹澤さんも雅人君のことを少しでも多くの人に知ってほしいと思っていることを知り「絵本の中に雅人君への想いを載せることができたら」と声をかけた。周囲の協力でイラストレーターも見つかり、成人式前に、やっと念願の絵本を完成させた。 「19年が経ち、一見、話さなければ子供を亡くしたということは、誰も気が付かないような毎日を送っています。でも、私は、息子の死を乗り越えたわけでも、立ち直ったわけではありません。乗り越えていたらこうした本を書こうと思いませんから」。自宅の居間や仏壇には将くんと家族の思い出の写真がたくさん飾られている。ついこの前の出来事に思えても、写真をはってあるテープの色の黄ばみを見ると、時の流れを感じる。
今でも将くんと自分の命が交換できるなら
「もし、今でも将くんの命と自分の命が交換できるのならすぐにでもしたい。将くんのことを忘れることも悲しみも消えることはありませんから」。そう語るたかいさんを、部屋中に飾られている将くんの笑顔が優しく見守っているようにみえた。「優しいあかりにつつまれて」は大手書店または、インターネットで購入できる。