宇垣美里が語る 「あぶデカ」舘ひろし&柴田恭兵、大人の男のカッコよさ <宇垣美里のときめくシネマ>
アナウンサー・俳優として活躍中の宇垣美里さん。映画・マンガなどさまざまなサブカルチャーをこよなく愛する彼女が、映画について語るこの連載。今回は、9月21日(土)19:00からWOWOWプラスで一挙放送される「あぶない刑事」劇場版3作品の楽しさをたっぷりと解説! 【写真を見る】サングラスとスーツでばしっと決めたタカとユージがとにかくカッコいい(「あぶない刑事」) ■画面からほとばしるバブル時代の華やかさとムチャクチャさ 今年8年ぶりの新作映画が公開された「あぶない刑事」シリーズ。名前だけは聞いたことがある、タカとユージがいるのよね......?くらいの解像度の皆さん、いいぞいいぞ、羨ましい!!できることなら私だって海馬を売り払い、イチからタカとユージと港警察署の面々に振り回されたい!ええ私もかつてはそうでした。触れる機会のないままにここまできてしまったけれど、えいやとこの世界に飛び込んでみたらもうかっこいいのなんのって!世代が違うから、ちょっとその時代にはなじみがないから、と敬遠していた人もぜひご覧いただきたい。 劇場版一作目は「あぶない刑事」。横浜の繁華街をパトロールしていた神奈川県警港警察署捜査課の刑事コンビ、タカこと鷹山敏樹とユージこと木下勇次。不審車両を追跡していたところ、ロケット弾を発射され、同じく追っていたパトカーが爆破された。また大手製薬会社では博士と助手が殺害される事件が発生。2人は目撃証言などから破壊工作のプロである傭兵の豹藤を容疑者として追い、そのなかでこの事件によって巨額の利益を得た人物を発見する。 画面から迸る好景気とバブルの華やかさといったら。平成の世に生を受け、生まれてこのかた不景気しか知らない私にとってはもう夢のような世界。煌びやかでゴージャスで、少し猥雑な横浜の街を闊歩する、サングラスとスーツでばしっと決めたタカとユージのかっこよさたるや。全ての所作がエレガントで、キザな台詞もあの肩幅も彼らの足の長さなら納得だ。というかバブル期って本当にあんなに全ての服に肩パット入っていたんですか?それとも映画内だけの過剰表現なんでしょうか?少年課に勤務する薫ちゃんこと浅野温子や松村課長こと木の実ナナの豪奢でバブリーなファッションも眩しい。 タカとユージはところどころのキメで台詞を息ぴったりにハモる一方、銃の構え方にはそれぞれの個性が出ていて絵として映える。かなりしっかりとしたアクションを本人がやっていて、ハラハラしてしまうシーンも。こんなに日本の警察が発砲していいのか?と思わず笑ってしまった。所かまわずタバコを吸い、車のシートベルトはとりあえず無視。う~ん、すごい時代だ......。 ■二作目の敵役・伊武雅刀はじめ豪華役者陣の若き姿が魅力 二作目の「またまたあぶない刑事」では、タカとユージは表向きは実業家ながら拳銃や麻薬・売春などありとあらゆる犯罪の元締めとして暗躍する長峰を追う。長峰の関係者が次々と殺されていく中、2人は長峰の密着取材を行うルポライターに協力を依頼。そんな中、代議士の娘も通う名門幼稚園の園児たちが通園バスごと誘拐される事件が発生する。 のっけからタキシード姿で登場する2人のあまりのキマリっぷりに思わず二度見。さらに長峰役は伊武雅刀、その手先役には赤井英和、美しきルポライターは宮崎美子とドラマや映画でよく見る豪華な役者陣の若かりし姿が魅力的だ。2人の後輩であるトオル役の中村トオルのおとぼけかわいい様子にもほっこり。この作品から薫ちゃんはかなりコメディエンヌに寄り始めていて、そのパワフルさがツボ。 三作目は「もっともあぶない刑事」。銃器密造工場に踏み込んだタカとユージは、その元受けである暴力団・銀星会を壊滅すべく会長の前尾に揺さぶりをかける。その日から得体のしれない者たちから命を狙われ続ける2人は、時効が4日後にせまる15年前の殺人事件を捜査する中で、とんでもない真相へと辿りつく。 銀星会会長を演じるのは若き柄本明!この頃から圧倒的な存在感と不穏さで、少ない登場シーンながら強烈なインパクトを残す。劇場版も3作目となりもはやその様式美をしっかりと履修しているこちらとしては、2人のやり取りやぶっとんだ薫ちゃん、ぼっこぼこに大破する車と気軽に登場するマシンガン、そのひとつひとつにうんうん、と頷きながら視聴してしまった。 タカとユージのコミカルな掛け合いはオシャレでいて、どこまでも互いを信用していることが端々から伝わってくる。ライバルではなくバディな2人は常に相手を尊重しているようで、この当時からこんなに素敵な関係が描かれていたんだな、とうっとりした。もちろん昭和の作品なので、セリフや描写の中には今はもう許されない表現だなとひっかかる部分はあるものの、2人は常に紳士で、女性男性問わず万人に丁寧だからその魅力は古びない。どんなに追い詰められても軽口をたたき、優雅に振舞う様子には余裕が感じられ、大人の男のかっこよさを体現している。まさに時代を越え、愛されるべき二人組だ。ひとまず今日はサングラスに肩パットをキメて外出するつもり。 文=宇垣美里 宇垣美里●1991年生まれ 兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサー・俳優として、ドラマ、ラジオ、雑誌、CMのほか、執筆活動も行うなど幅広く活躍中。
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