田中元首相を激高させ…ロッキード事件捜査の要「堀田力さん」が選んだ“第二の人生” 「出世競争で人生を干上がらせてはもったいない」【追悼】
出世競争で人生を干上がらせてはもったいない
私費を投じて「さわやか福祉推進センター」(現・さわやか福祉財団)を設立。ボランティアを広めて、地域社会の助け合いや高齢者福祉を進める活動を始めた。 Jリーグの初代チェアマンで日本サッカー協会元会長の川淵三郎さんは言う。 「堀田さんがボランティアをしている記事を読み、切り抜いて保存していました。Jリーグで寄付させていただきたいと考え、堀田さんなら信用できると会いに行った。穏やかで謙虚。この人がカミソリのように鋭い鬼検事と呼ばれたのかと驚いた。困った時はお互いさまという自然な考え方で気持ちも合いました。私個人でも寄付したい、どの程度の額がいいのでしょうと聞くと、ちょっと痛いと思うぐらいがいいですとのお返事が印象的でした。確かに少しは役に立っている気持ちになります」 「財界」主幹の村田博文さんは言う。 「定年後の生きがい、挑戦が大切で、出世競争や組織の中で人生を干上がらせてはもったいないと語っていました。自身も地位を求めず現場主義を貫いた。検事もボランティアも相手の心と向き合うという点でつながっています」 2022年、脳梗塞を患うが、リハビリを続けて取材を受けるまでに回復した。生涯、仕事に没頭できたのは妻の明子さんのおかげだ。 11月24日、老衰のため90歳で逝去。 人間は8割が欲望、2割が理性でできていると考えていた。理想を唱えず現実的で、政治には一定のお金がかかることも認めていた。
「週刊新潮」2024年12月19日号 掲載
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