UACJと東洋製罐、リサイクル缶蓋の量産準備完了
――事業本部の概況を。 「今年1月に発足した押出・加工品事業本部は、UACJ押出加工(押出加工)とUACJ金属加工(金属加工)の運営をさらに強化するために設置した。国内では仙台から広島まで11拠点(押出加工5、金属加工6)を持ち、海外にも6拠点(押出加工2、金属加工4)を展開する事業体となった。これからは多拠点を持つ強みを有効活用していく」 「UACJ本体に本部を置くことで、従来よりも意思決定が迅速になるほか、経営資源の集約や販売チャンネルを活用することでシナジー創出が可能になる。例えば押出加工が出荷していた押出素材に、金属加工が加工やアセンブリまで施して提供すれば、顧客は加工外注や輸送の手間を省ける。すでに鉄道関連ビジネスでは、押出加工の顧客に金属加工の製品を提供するなど効果が出始めている」 ――10月には押出2子会社(名古屋・小山)がUACJに統合する。この狙いは。 「2拠点ともに鋳造工程を持っており、UACJと一体運営することでスクラップ管理の一元化が可能になり、リサイクル率向上につなげられる。また人的資源の有効活用も可能になる」 ――今期からの中期計画の取り組みは。 「〝素材+α〟に取り組むことになるが、〝α〟となるのは加工とリサイクル。2027年度に経常利益60億円を目指しているが、〝α〟で20億円の利益を積み上げたい」 ――具体的に狙う分野は。 「成長事業と掲げるのは自動車や航空宇宙、電機産業。自動車はEV市場が拡大する中で軽量化と熱マネジメントがターゲットになる。電池冷却に関してはモビリティテクノロジーセンター(MTC)が熱解析から設計提案までできるのがUACJの強み。この機能を高めることで競合との差別化を図りたい。また軽量化に向けて他素材からの代替の動きも出てきており、バンパーやドアビームなどの構造部材にも注力していく」 「航空宇宙市場に対しては、海外航空機大手の材料認証作業が佳境を迎えている。社内での評価が完了し、一部社外で実施している評価を待っている。25年中には承認を取得し、航空機用アルミ押出材料を利益貢献につなげていきたい」 ――海外事業で取り組みたいことは。 「自動車熱交換器用多穴管において日本市場でBEV化が進むとともに多穴管需要が増えるという予測があり、この需要増に対してはタイ押出拠点からのアウトインでの対応も含めて検討したいと考えている。チェコ押出拠点もエアコン室外機向けで多穴管の販売を増やしたい。金属加工のメキシコ2拠点は自動車部品の引き合いが旺盛で、これに対応していく」 ――適正価格の実現に向けた考えは。 「昨年副資材やエネルギー価格の上昇を受けて、押出製品の加工賃を20%以上引き上げた。A6063形材については、物流費や人件費高騰の影響が大きく、この4月にキロ20円の価格改定で提案を始めており、今上期中の市中浸透を目指している。今後も各種コストは増加方向にあると見ており、状況に応じて他の品種も価格改定をお願いしていく」 ――設備投資の計画は。 「ターゲットとしているのは自動車や熱マネジメント関連となるが、現時点で確定した案件はない」 ――環境負荷軽減に向けては。 「グリーンアルミを利用したビレット調達を開始した。A6063など複数の合金を購入しており、需要に応じてグリーンアルミによる形材供給を進めていく。また特定ユーザーに対しては、製造現場で発生する加工スクラップ回収を始めた。リサイクルの取り組みも今後強化していきたい」(遊佐 鉄平)