門脇誠(読売ジャイアンツ・内野手)×中川絵美里「優勝に縁がなかった自分。アジア王者を決めたサヨナラ打は大きな財産になった」
中川 こうしてお話を伺っていて、ヒーローインタビューでの受け答えなども含めて、昨年までルーキーとは思えないほどの落ち着きぶりに感服します。幼少期からずっとそうだったのでしょうか? 門脇 昔は元気いっぱいでうるさい子だったんですけどね。あ、今も元気か(笑)。高校時代に変わりましたね。 中川 何かきっかけが? 門脇 最初にも少しお話ししましたが、「考える」ようになったんです。高校球児なら、やはり甲子園を目指すわけで。出るためにはどういうチームをつくればいいのかと。主将を務めるようになってからは、ますます考える力がつくようになりました。 中川 それは野球のみならず、日常生活においてもですか? 門脇 はい。私生活もめっちゃ意識するようになりました。徹底すべきところは徹底する、といった具合に。 中川 その真摯(しんし)な姿勢のベースになっているのは、お父さまの存在もありますか? 幼少期から個性的な練習を施されたり、大学進学時にはお父さまが転職されて、門脇選手の体づくりを徹底サポートされたりしたそうで。まさに二人三脚ですね。 門脇 父親というよりも、個人マネジャーという存在ですね。僕がプロに入ってからはなおさらです。 中川 マネジャーというと、例えばどのような関わり方ですか? 門脇 入団当初、車を持ってなかったので、試合の移動日に送迎してもらったり。父も言うんですよ。「俺はマネジャーやから」と。シーズン中でしたら、移動の車中で野球に関することをいろいろ話したりして。僕がプロとしてやりやすい環境をつくってくれています。 中川 巨人、そして侍ジャパンでの活躍には、お父さまも目を細めていらっしゃるのではないですか? 門脇 「(活躍ぶりが)エグいな」とは言われましたけど別にホメてくれることもなく、当然でしょという反応でした。やたらと自信に満ちあふれている親なんですよ(笑)。僕は必死に応えるだけですね。 ■ノートに書いた「このままやったら、おまえ終わるぞ」 中川 もうひとつ、門脇選手の真摯な姿勢を物語るエピソードとして、手帳に自分の思いをつづられているそうで。それは毎日欠かさずですか? 門脇 ええ、キャンプインから毎日書いていました。技術面の反省や課題だったり、それがないときは自分の胸中にある思いだったり。前半戦は後者のほうが多かったです。 中川 その思いというのは、具体的にはどんなことを? 門脇 うーん、重たい話ですけど、6月あたりは全然試合に出られなくて。練習にも身が入らず、どうしたらいいかわからなかった状態やったんで、思うがまま、自分に対して書き殴ったんです。「このままやったら、おまえ終わるぞ」と。シーズンが終わって読み返してみたら、ああ、自分はここまでがむしゃらにスイッチ入れてんねんなと。 中川 そうしたノートをつけて、自分を客観視していたのですね。どうしても好不調の波はあるわけですし、自分を見失わないためにも、そうやってアウトプットすることで気持ちを維持するというのは大事ですよね。 門脇 モチベーションというのはあえて、あまりつくらないようにしているんです。嫌々野球をやっているわけはないので。自分のやるべきことを明確にして、日々取り組む。それと、阿部監督の記事で見たんですけど、「不安に駆られろ」という言葉が胸に刺さって。不安になりすぎるのも良くないですが、不安にならないと行動には移せないので。父親を含め、周りの人たちにも支えられていることを忘れずに、今後も真っすぐ野球と向き合っていきたいですね。 ■来季は打率、守備、盗塁すべてで結果を