門脇誠(読売ジャイアンツ・内野手)×中川絵美里「優勝に縁がなかった自分。アジア王者を決めたサヨナラ打は大きな財産になった」
中川 門脇選手といえば、昨年11月に行なわれたアジアプロ野球チャンピオンシップ2023での活躍が印象的でした。ルーキーイヤーに侍ジャパンに初選出、しかも大会MVP受賞。振り返ってみていかがでしょうか? 門脇 いや、想像もつかなかったですね。ただ、初戦の1次リーグ台湾戦でしっかり初ヒットを打つことができて、猛打賞をマークできたので、そこでだいぶ自分のペースにもっていけたのかなと。 中川 4試合すべてスタメン出場、試合ごとに結果も残しました。決勝の相手は韓国。大会で唯一ビハインドを背負うゲーム展開でしたが、ベンチにはそれまでと違った緊張感が漂っていたのではないですか? 門脇 ええ、ありました。リードされる展開がそれまでなかったですからね。負ける雰囲気は全然なかったんですけど、点を取らなきゃいけないっていう緊迫感はありました。 中川 門脇選手ご自身はどうでしたか? 初戦が終わってから、さほど緊張はなくなったとおっしゃっていましたが。 門脇 はい、緊張はなかったんですけど、なかなか結果に結びつかなくて。チャンスが3回回ってきて、いずれも打てなかったので。試合の入り方については反省でした。 中川 タイブレークの延長10回、2死満塁の場面。あの状況で打席に入るのはかなりの重圧だったのではないかと。場内も異様な熱気でした。 門脇 それは感じましたね。東京ドームが、23年で一番の観客動員数だと聞かされて。すごいなと。でも、実は坂倉(将吾・広島)選手がセンターフライを打ったとき、自分は勝ったと思い込んでしまって。全然、準備してなかったんですよ(笑)。 中川 1死満塁であと少しでホームランかという一打でしたからね。犠牲フライで三塁ランナーが戻ってきて、3-3の同点に。 門脇 ええ、それで、「やばい、もうすぐ俺じゃない?」と。慌ててバットにスプレーをかけて、走って行って。かなりテンパっていたんですが、井端(弘和)監督からは「いつもどおりでいけ」と、肩を叩かれて。そこで一回気持ちを落ち着かせて、バッターボックスに立ったんです。 中川 逆方向への見事なサヨナラ打でしたね。打った瞬間のことは記憶にありますか? 門脇 いやもう、シビれましたね(笑)。「まさか、打ったんだ」と。今まで、優勝がかかった大事な場面、ここ一番という局面で打ったこともなかったですし、優勝経験というのもなかったんです。......勝ち運を持っている選手っているじゃないですか、僕にはそれがないのかなって、ずっと思い続けてきたんで、あのような劇的な優勝を果たせたのは、今後の大きな財産になると思いました。 中川 財産という意味では、侍ジャパンのキャンプで井端監督から指導も受けましたね。 門脇 そうですね、逆シングルでの受け方とか、すごく勉強になりました。 中川 他球団の選手たちと一緒に過ごす中で、ご自身の今後の血肉になるような新たな発見はありましたか? 門脇 ええ、万波中正(まんなみちゅうせい・日本ハム)選手がいろんなバットを使って、いろんな工夫を凝らして練習していたので、盗めるものは盗もうと。みんなそれぞれスタイルを持っているので、打っている姿を見ているだけでも勉強になりました。おかげさまで引き出しは増えたと思います。 中川 若手主体で編成されたチームでしたが、24年はプレミア12、そして26年にはWBCが控えています。侍ジャパンに対する思いは強まりましたか? 門脇 確かに選ばれたいとは思いますが、まずはジャイアンツでショートにレギュラーとして定着することが、現時点で最も必要なことだと考えています。しっかり成績を収めたところで、また侍ジャパンに選ばれたらいいですね。 ■父親は身内じゃなく完璧なマネジャー