東京国際映画祭「アジアを代表する映画祭に」 安藤裕康チェアマン語る
都内で多くの映画館が集まる映画の街、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催されていた第37回東京国際映画祭(10月28日~11月6日)。以前は「存在感が薄い」「独自色がない」といった批判を受けてきたが、近年は国内外の注目度も高まっている。令和元年に同映画祭のチェアマンに就任して以来、同映画祭を牽引してきた安藤裕康氏(79)が振り返った。 数字的にはチケット収入は昨年の約1割増、映画関係者らの参加数も約2500人と昨年よりも2割増加した。特に今回、会期中に上映された中国や台湾の作品に人気俳優が出演していたということもあり、チケットが完売する作品も続出したという。 「中国から多くのお客さまが来て、それがチケットの売り上げにかなり貢献した。われわれはアジアの映画祭を目指しているので、日本のお客さまも大切だが、中国や香港、台湾、韓国、東南アジアといった国々からもどんどん来ていただくのが目標」と話す。 ■中国語圏の作品多く 今回、コンペティション部門に出品された15本のうち中国や台湾、香港など中国語圏の作品が5本、日本の作品(台湾との合作を含む)が3本と、アジア圏の作品が過半数を占めた。また、新進気鋭の監督がコンペ部門に応募するケースも増えている。 「東京国際映画祭に行けばアジアの映画の傾向が分かる、秀作に出合えるという認識が国内外で定着して初めてアジアの代表的な映画祭といえる。この映画祭がアジアに注力しているのはそういう意味合いもある。こうした認識は欧米でもぜひ広まってほしい」 そのコンペ部門では、「敵」(吉田大八監督)が最高賞の東京グランプリのほか、最優秀監督賞、最優秀男優賞(長塚京三)の3冠を達成。日本映画の存在感も増した。これまで、日本の監督は東京国際映画祭ではなく、カンヌやベルリン、ベネチアといった3大国際映画祭のコンペを目指すことがほとんどだった。 「日本作品がグランプリを取ったのは19年ぶり。これは日本の映画業界にとってもうれしい話だ。大手映画会社のみなさんも喜んでいた。日本の作品が東京国際映画祭で注目を浴び、世界に出ていくようになってほしい」 ■若手監督を育てたい