周庭氏の亡命 「運動を続けずに逃げてしまった」という中国当局のシナリオ通りに
戦略科学者の中川コージが12月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。滞在中のカナダからSNSを通して「香港には戻らない」と述べた周庭氏について解説した。
香港の民主活動家・周庭氏、事実上の亡命か
香港の民主活動家・周庭(アグネス・チョウ)氏は12月3日に自身のSNSで、現在カナダに留学中であり「香港には生涯戻らないと決めた」と明らかにした。周庭氏は許可なくデモを組織した罪などで2020年12月に実刑判決を受け、7ヵ月後に出所していた。 飯田)中国外務省の汪文斌(オウ・ブンヒン)副報道局長は昨日(12月4日)の会見で、周庭氏について「香港は法治社会だ。いかなる人にも法外の特権というものはない」と述べました。メールもいろいろいただいています。岐阜県恵那市の“アマリサ”さんからは、「カナダに亡命したということで、香港当局はよく国外へ行くことを許可したなという印象です。このままいても苦しいばかりだし、亡命できてよかったとも思います。カナダでの安全にも気をつけて欲しいですね」といただきました。どうご覧になりますか?
国外に出てしまうことで外部環境となり、大勢に影響は与えない
中川)周庭さん個人に対しては、安全に逃げることができてよかったというのが率直な感想です。もう1つは、個人的なところに話を矮小化させてはいけない問題があります。今回もそうですが、1989年の天安門事件の時代から、中国では情報が出てこないため、国外の民主化勢力からの話が強くなる。しかし、それが大勢にどれだけの影響を与えるかと言うと、あまり与えないわけです。 飯田)国外の民主化勢力からの話は。 中川)今回も、個人としてはよかったと思いますが、体制に対する内部への圧力のような影響がどれくらいあるかと言うと、「変わらないのだな」ということが改めて見えたと思います。中国共産党からすると、外へ出た時点で外部環境になってしまうのです。
事実上の亡命を中国当局の宣伝に使われる
中川)さらに言うと、香港自体が金融都市として発展していたので、中国共産党としては香港を地盤沈下させていき、上海や深圳などの金融都市を上げようという目論見があった。そのために香港を締め続け、逃亡犯条例が出てきたことで、この問題が起きたのです。さらに「香港は数十年もあんなに儲けて、どうして上から目線なんだ」という大陸側の人民の目線があったので、ある意味では、ほぼ民主化は響かないような状況があった。そこで逃げてしまうと、「逃げたではないか」という話になり、中国当局の宣伝に使われてしまうわけです。 飯田)国外に出てしまうと。 中川)組織論的に言えば、中央からすると「勝手に逃げた」という形になりますし、なおかつ汪文斌副報道局長が言うように「法治社会だから十分行けたよね」となり、これも向こうにディールの隙を与えているような気がします。香港では数年間、いろいろなことがありましたが、結果として中国共産党は揺るぎませんでした。今後もそうなる蓋然性は低かろうと思えた案件でした。