尹大統領も見るという極右ユーチューバー…官邸前デモで支持者から後援金1億ウォン
12・3戒厳事態後、極右性向のユーチューブチャンネルが戒厳令擁護や逮捕状拒否など極端な主張と検証されていない陰謀説で保守支持層を極端な方向に導いている。ユーチューブに刺激された支持者がソウル竜山区漢南洞(ヨンサング・ハンナムドン)の大統領官邸に集まり「尹錫悦(ユン・ソクヨル)逮捕拒否」を叫びながら「盾」となると、尹錫悦大統領は「ユーチューブで姿を見ている」として結集を呼びかけた。弾劾案通過後の世論の二極化の動きに乗り、ユーチューバーは照会数と登録者数を増やしながら大金を稼いでいる。 2日、漢南洞の官邸前で尹大統領逮捕状執行を阻止するための座り込みが一部の極右ユーチューブチャンネルで生中継された。支持者およそ30人が警察阻止線を突破して官邸の正門前の道路上で横になったが、警察の解散警告の末およそ4時間ぶりに連れ出された。この場面をリアルタイムで見たユーチューブ視聴者らは「尹大統領を守ろう」「弾劾は無効」「警察はしっかりしろ」などと書き込んでいる。 先月14日に尹錫悦大統領弾劾訴追案が国会を通過して以降、漢南洞の官邸前は極右ユーチューバーの聖地になっている。特に先月30日、高位公職者犯罪捜査処が尹大統領の逮捕状を請求すると、「神の一手」「キム・サンジンTV」「ホン・チョルギTV」などの極右ユーチューバーが結集した。登録者158万人の「神の一手」は2016-17年の朴槿恵(パク・クネ)元大統領弾劾政局で「弾劾反対」デモ中継をし、登録者を100万人にまで増やした。 「神の一手」は裁判所が1日に尹大統領逮捕状を発付すると、「官邸前に逮捕組が現れた」「尹錫悦を守ろう」「青年10万人が集まった」など刺激的なタイトルでライブ放送を続けた。昼夜を問わない集会のライブ放送が続き、現場に行けなかった支持者から「スーパーチャット (後援金)」が集まった。ユーチューブチャンネルの照会数・登録者と収益などを分析するプラットホーム「プレイボード」によると、神の一手は戒厳事態以降、後援金だけで約1億2087万ウォン(約1300万円)にのぼる。先月23-29日の1週間、国内ユーチューブチャンネルの中で最多募金額(1840万ウォン)となった。 普段から新聞・放送よりユーチューブをよく見るという尹大統領は1日午後、官邸の前に集まったデモ隊に手紙を送り、「生中継ユーチューブで苦労されている方々の姿を見ている。本当に感謝し、同時に心が痛む。最後まで戦う。頑張ろう」と激励したりもした。 有名な保守ユーチューバーは尹大統領の報道官のような役割も自負した。戒厳擁護と弾劾反対、逮捕状の不法などを主張し、照会数と登録者数を大幅に増やした。登録者185万人の「ジン・ソンホ放送」は繰り返し「光化門(クァンファムン)人山人海、弾劾棄却拡散」「尹錫悦大統領が自ら投稿した、いいね3倍」などのメッセージを発した。弾劾反対世論を受け、「ジン・ソンホ放送」の先月の照会数は前月比3.5倍増の5205万回となった。「尹大統領の決断が通用している」として戒厳宣言をかばってきた政治評論家コ・ソングク氏のユーチューブチャンネルも登録者が先月8万人増えて116万人となった。登録者136万人のペ・スンヒ弁護士は戒厳の翌日、自身のユーチューブチャンネルで「大統領が憲法上できることが戒厳だ」と主張して以降、「尹大統領は必ず戻って来る」「支持率30%突破」「高位公職者犯罪捜査処が左派判事を選んだ」などと題した映像を載せた。 一部の極右ユーチューバーは戒厳に関連して検証されていない疑惑も拡大生産している。「保安司」というチャンネルは戒厳当日に情報司令部傘下・北朝鮮派遣工作部隊(HID)の中央選挙管理委員会研修院投入に関連し、先月28日に「選挙操作の現行犯で中国共産党電算要員およそ90人を逮捕した」と主張した。キム・セウィ氏が運営する「カロセロ研究所」も「選管委研修院中国人ハッカー部隊90人は誰か」という記事を紹介し、HIDの共産党要員逮捕説を広めた。選管委はこれに「事実無根」と反論した。 こうした活動は世論の二極化につながっている。中央日報の新年世論調査で尹大統領の弾劾に対して回答者の67%が賛成したが、自身を「保守性向」と答えた回答者の66%はむしろ弾劾に反対した。進歩層の96%は弾劾に賛成した。竜仁大のチェ・チャンリョル教養学部教授は「極右ユーチューバーは保守支持層を扇動して分裂で金を稼ぎ、尹大統領はユーチューバーと支持者を盾に民主主義を脅かしている」と指摘した。