手負いの大谷翔平「あんまり覚えてない」世界一へ徹した全力プレー…同僚に出場伝えた真意とは
<ワールドシリーズ:ヤンキース2-4ドジャース>◇第3戦◇28日(日本時間29日)◇ヤンキースタジアム 【ニューヨーク28日(日本時間29日)=斎藤庸裕】悲願達成まで、あと1勝-。ドジャース大谷翔平投手(30)が、ヤンキースとのワールドシリーズ第3戦に「1番DH」で出場し、快勝に貢献した。第2戦で左肩を亜脱臼し、できる限り患部を固定する手負いの状態ながら強行出場。第1打席で四球を選び、3番打者フレディ・フリーマン内野手(35)の先制2ランを呼び込むと、第2打席では進塁打を放ち、貴重な追加点につなげた。シリーズ3連勝で一気に王手をかけ、メジャー挑戦から追い続けた夢の実現が、いよいよ目の前にやってきた。 ◇ ◇ ◇ 世界一へ、一気に王手をかけた。その大きな1勝に貢献したのは大谷の姿であり、断固たる決意だった。試合開始の直前、ヤ軍の選手たちがまだ誰もグラウンドに出ていない中、大谷が一番乗りでベンチから出てきた。両手で素振りを14回。あえて、見せるかのように力強くスイングした。「自分のベストを尽くす」。その一心で気力を振り絞り、全力プレーに徹した。 敵地ヤンキースタジアムで行われた試合前の両チーム選手紹介では左肩を固定し、ジャンパー姿で登場した。打席中、スイングのフォロースルーでは左手を離し、痛みをこらえるような場面もあった。出塁すれば、左手でユニホームの胸部をつかみ、肩をなるべく動かさないように工夫した。手負いの状況は明らかだったが、「もうあんまり覚えてない。痛い、痛くないという感じは、あんまり考えてはなかった」。いかに勝つかに集中し、もはや体の感覚は記憶になかった。 強打者の存在感を醸しだし、第1打席で四球から出塁した。すると、3番フリーマンが2ランを放ち、全速力で走ることなく先制のホームを踏ませてくれた。第2打席、無死一塁から二ゴロの進塁打でチャンスを生むと、ベッツが粘り腰の適時打を打ってくれた。たとえ故障や不振などで苦しむ選手がいても、全員でカバーする-。今季のド軍を象徴する勝ち方となった。 もっとも、その団結力と勢いを大谷が自ら引き寄せた。第2戦で負傷後、検査のためチーム便とは別でニューヨークへ移動。診断を踏まえた上で出場できると分かるや否や、グループメッセージで同僚にその旨を伝えた。真意は「チームの士気だけはやっぱり下げたくない。ケガ人もいる中で、フレディ(フリーマン)もそうですけど、みんなが万全の状態で必ずしも出ているわけではないので。どこかしら痛みを抱えながら出ている選手も多い。その中で自分のできることを、しっかりやれればいい」。一丸で、ともに戦うことを真っ先に誓った。 3連勝でヤ軍を圧倒し、メジャー挑戦からずっと目指してきた“世界一”が、はっきりと見えた。「もちろん、明日決められるに越したことはないですし、そのためにみんなでまた明日、あと1勝、しっかり勝てるように、まず集中したい」と、いつも通りに気を引き締めた。計り知れない注目を浴びながら、駆け抜けてきた激動のシーズン。集大成のワールドシリーズ制覇は、目前にある。 ▽ドジャース・ロバーツ監督(大谷に)「本当に競争心を持ってプレーした。状態は悪化しなかったと思う。四球の出塁は明らかに良いスタートだった。出場に感謝している。外角球を追った時に苦痛の表情を見せたが、それを考えるのは無意味だ。明日も出場するのだから」 ▼7試合制のポストシーズン(PS)で3勝0敗としたチームは、のべ40チーム中39チームが優勝しており、ドジャースのV確率は98%。WSに限れば100%。40チーム中31チームが4連勝している。逆に2チームだけが0勝3敗から3勝3敗に持ち込み、逆転優勝したのは04年ア・リーグ優勝決定戦でヤンキースに競り勝ったレッドソックスだけ。この時、第4戦の盗塁から奇跡の4連勝を導いた選手がロバーツ(現ドジャース監督)だった。 ▼ドジャースが4年ぶり8度目の世界一になれば、ジャイアンツと並んで5位タイ。ヤンキースに勝利してWS王者となれば81年以来4度目。4勝0敗で決めれば63年以来、球団史上2度目となる。