劇場版「鬼平犯科帳 血闘」

「人の道も双六と同じだろう。“あがる”こともあれば“ふりだし”に戻ることもある」。2024年5月に公開された松本幸四郎主演 劇場版「鬼平犯科帳 血闘」が、1月13日(月・祝、13:00ほか)より時代劇専門チャンネルにて独占初放送される。「鬼平犯科帳」シリーズは、時代小説の大家・池波正太郎の三大シリーズの一つとして知られ、累計発行部数3,000万部を超えるベストセラー時代小説『鬼平犯科帳』を原作に、日本映画放送が松本幸四郎を主演に迎え、映像化してきた時代劇。劇場版「鬼平犯科帳 血闘」では、二人の女性を巡り、知られざる鬼平の過去と現在が交錯し、火付盗賊改方長官・長谷川平蔵がなぜ"鬼平"と呼ばれるようになったのかが紐解かれる。 【写真】父譲りの男前…松本幸四郎の長男・市川染五郎 冒頭の言葉は、本作で平蔵が何気なく語ったもの。確かに人生と双六は似ている。だが、違うのは、人生はたとえふりだしに戻ったとしても、それまで歩んできた過程は決して消えないし、あがりになったとしても、未来は続いていく。そして、私たちは選択という名の賽(サイコロ)をその命が尽きるまで、常に振り続けなければならない。 そんな双六のような山あり谷ありの道程とそのあがり(結末)が描かれた劇場版「鬼平犯科帳 血闘」は、始めから終わりまでさまざまな魅力に溢れている。今回は、その見どころを3つのポイントに分けて紹介したい。 ■老若男女が楽しめる王道物語 まずはなんと言っても丁寧な描写で描かれつつもテンポ感が良いストーリーだろう。「鬼平犯科帳」シリーズのファンにとっては、まさに原点の物語と言える一方で、初めて見る方にも分かりやすい内容となっている。メインテーマは“因果応報”、“復讐劇”となっており、そこに恋愛要素も絡んでくる。王道な物語だが、一つひとつのシーンが緻密に描かれているため奥行きがあり、老若男女誰が見ても楽しめるはずだ。 ■迫力とバリエーションが豊富な殺陣シーン 時代劇＝殺陣アクションと言っても過言ではないぐらい殺陣シーンは重要だ。劇場版「鬼平犯科帳 血闘」は「アクションエンターテインメント大作」と謳っているだけあって、殺陣シーンが充実している。臨場感あふれる大迫力でキレのある剣さばきが気持ちいい。そしてなんと言っても、刀で斬り合う音が癖になる。感情がのった迫力あるダイナミックな殺陣で、そのバリエーションも実に豊富。思わずクスッと笑ってしまう演出から息を呑む斬り合いまで、平蔵の心情にあわせて変化する殺陣に注目だ。 ■松本幸四郎×市川染五郎の父子による現在と過去 平蔵を父・松本幸四郎が演じ、若き日の平蔵、銕三郎を長男・市川染五郎が演じるという豪華なキャスティングも劇場版「鬼平犯科帳 血闘」の魅力に違いない。落ち着いた平蔵と若き日に放蕩無頼の生活を送っていた平蔵の対比と共に、どちらにも共通して漂う色気。実際の父子が演じるからこそ、過去と現在がリアルに繋がっていく。余談だが同心・小野十蔵役の柄本時生とひとり働きの盗賊・鷺原の九平役の柄本明も父子で出演しており、尚且つ柄本明はかつて小野十蔵役(二代目中村吉右衛門主演「鬼平犯科帳」シリーズ)を演じていたのだから面白い。 劇場版「鬼平犯科帳 血闘」公開記念舞台挨拶の際には本作にかける思いを明かしていた、松本幸四郎×市川染五郎の父子が魅せる鬼平の物語を感じてほしい。 ■長谷川平蔵役　松本幸四郎 「世界一の職人が集う京都の撮影所で、情熱と愛情を持って作品を作り上げました。クライマックスの殺陣のシーンは、一手一手に意味があり、最後には“鬼”になっています。一歩も引かない、前に進んでいく、という強い想いを刀に込めました。人と人とのつながりや絆が深く描かれた作品です」 ■長谷川銕三郎役　市川染五郎 「振り棒での立ち回りは、アドレナリンを維持しようと常に気持ちを高ぶらせて臨みました。“新しい正統派の時代劇”ですので、若い世代にも新鮮に感じていただけると思います」 ■劇場版「鬼平犯科帳 血闘」の魅力を深掘りするアフタートーク番組も さらに本編終了後(13日(月・祝)13:00～を除く)には『鬼平犯科帳アフタートーク「血闘」編』も放送される。同アフタートークでは、松本幸四郎らおなじみのキャストが勢揃いするだけでなく、アフタートーク初の女性ゲストとして中村ゆり、志田未来が登場。スタジオセットも豪華にパワーアップし、撮影の裏側や各自の推しシーン、時代劇への思いを語る。志田未来は引き込み女・おりん役を演じるにあたり、あるシーンを密かに何度も練習していたことを明かし、まわりを驚かせた。また番組内では故・火野正平さんを偲び、レギュラーキャスト陣と山下智彦監督が火野さんとの思い出を語る特別企画【追悼－火野正平－】もあわせて放送。映画館で劇場版「鬼平犯科帳 血闘」を観たことがある方もアフタートークを見ることで本作を二度楽しめるはずだ。 そのほか、1月13日(月・祝)には「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」「鬼平犯科帳 でくの十蔵」「鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛」とテレビシリーズ3作品の一挙放送も。また火野正平さん最後の撮影現場となったシーンが収められている最新作「鬼平犯科帳 老盗の夢」は、2月8日(土)13:00ほかに時代劇専門チャンネルにて独占初放送されるため、こちらも見逃せない。 構成・文＝戸塚安友奈