GRAPEVINE×betcover!! 異なる世界観で観客を圧倒させた、一夜限りの対バンライブをレポート
という、唯我独尊かつ圧倒的な、betocover!! の50分が終わった後、ステージ転換を経てGRAPEVINEの時間へ。左のライザーにドラム、右のライザーにキーボード、前にギターアンプやエフェクターボードやベースアンプ、といういつものセッティングだが、betcover!! のセットが超シンプルだったせいで、何か巨大な要塞のように感じられる。 この日GRAPEVINEは、本編10曲、アンコール2曲の12曲を演奏した。 ビクター/スピードスターに移籍して今年で10周年を記念して、この10年間にリリースした曲だけでセットリストを組んだワンマン『The Decade Show』を、7月と8月に東阪の野音で行った。そして、8月31日の金沢から10月17日の大阪の追加公演まで『The Decade Show : Club Circuit 2024』というタイトルで、同様の趣旨のツアーを行っている。その途中にこの日のライブは行われたわけだが、それとはまったく異なるセットリストだった。 本編は、最新アルバム『Almost there』(2023年)から4曲。そのひとつ前の『新しい果実』(2021年)から1曲。そのさらにひとつ前の『ALL THE LIGHT』(2019年)から1曲。そのふたつ前の『BABEL,BABEL』(2016年)から3曲。なぜ『ROADSID PROPHET』(2017年)からはゼロなんだ? という気もするが、まあそういうときもあるでしょう。あと、出たばかりの新曲「NINJA POP CITY」は、もちろん演奏した。 アンコールは「光について」(1999年)と「Glare」(2008年)──という選曲が、まず素晴らしかった。「Alright」「EVIL EYE」で始まり、「HESO」「Scarlet A」「アマテラス」「雀の子」という中盤を経て、後半に「実はもう熟れ」「NINJA POP CITY」「ねずみ浄土」「SEX」を固め撃ちする、という曲順も最高だった。 あえてケチをつけるなら、アンコールだろうか。「Glare」はいいけど「光について」はやらなくてもいいですよ、フェスとかは別だけど、ワンマンやこういう対バン企画に来るようなファン(自分を含む)が聴きたいのは、「今のGRAPEVINE」と「レアなGRAPEVINE」ですから。と、言いたくなった。まあでも、それは俺がちょっとアレなだけで、バランス感覚としてはやる方が正しい、と思う。 そして、betcover!! と同様、GRAPEVINEも音がめったやたらといい。おかげで、歌とコーラスとすべての楽器の演奏を、くっきりとクリアに把握できる。西川弘剛(g)がリードのときも、田中和将(vo/g)がリードのときも、ふたりともリードのときも、ふたりともリードじゃないときもある2本のエレクトリックギター、それぞれの音。「アマテラス」の中盤以降などで、曲をひっぱる役割を果たす金戸覚(b)のベースの響き。シンプル極まりない、余計なことはしない、あってほしい音をあってほしい場所に確実に置いていく亀井亨(ds)のドラム。「音を広げる」と「音を混沌に導く」役割を一手に担う高野勲(key)の鍵盤。「HESO」などで時折入ってくるリズムマシンの音、など。 特にこの日は、西川弘剛のギターの1曲ごとの音の違い、鳴り方の違い、そのレンジの広さを楽しめる選曲だった気がした。そして田中和将のボーカル、今日も絶好調。めちゃめちゃ声が出ているし、とにかく楽しそう。「今のこの人、本当にライブが楽しいんだな」と、観ていて思うことが最近多いが、その極み、みたいな状態である。 登場するなり「ギロッポーン!」と叫んでから「Alright」に入る。次の「EVIL EYE」も「行くぞギロッポーン! ギ・ロッポーーン!!」から始まる。その2曲を終えたところのMCでは、「最高にかっこよかったです!」とbetcover!! を称賛してから、「今日はしょうもないことは言いませんよ。なんせギロッポンやからね」。とにかく「ギロッポン」と言いたいようである。 6曲目を演奏し終えて「今の曲が10億回再生の「雀の子」という曲でした。10億1回目を、誰か再生してください」。で、「電話なんてやめてさ、六本木で会おうよ、今すぐおいでよ」と、岡村靖幸「カルアミルク」のサビの言葉をはさんでから、次の「実はもう熟れ」にいく。「NINJA POP CITY」のイントロでは、ウチワを手にステップを踏んだ。 そして、東阪の『The Decade Show』では、(たぶん)敢えてセットリストから外されていた「ねずみ浄土」、やはり、圧巻。ドラムロール→ドラムのフィル→リズムを刻み始める、そして田中&亀井が歌い始めた瞬間に場の空気が変わるのを、各地で何度も体験してきたが、何度食らってもゾクゾクする。曲終わりの拍手の長さが、その威力を象徴している気がした。 続く「SEX」(この曲を本編の最後に持ってくるところもたまらない)を、シンセの残響音のリフレインで終え、一度ステージを下り、アンコールを求めるハンドクラップに応じて出てきた田中は、「非常に今日はいい夜になりました。刺激もいただいたし」と、再度betcover!! に感謝を伝えてから、「光について」を歌い始めた。 『The Decade Show : Club Circuit 2024』の本編が、名古屋で終わった2日後=9月25日に、2024年3月28日Zepp DiverCityの映像作品『Almost There Tour extra show at Zepp DiverCity』がリリースになる。それ以降のGRAPEVINEのアクションに関しては、10月17日のツアー追加公演=umeda TRAD以外は、何もアナウンスされていない。名古屋、あるいは梅田が終わると同時に、何か発表があるとみた。楽しみに待ちたい。 なお、umeda TRADは、10月31日で営業が終了になる。バナナホールというライブハウスだった頃に、GRAPEVINEが初めてワンマンを行った場所である(1997年12月)。 Text:兵庫慎司 <公演情報> 『MAGNIFIK GRAPEVINE×betcover!!』 2024年9月12日(木) 東京・EX THEATER ROPPONGI 出演:GRAPEVINE/betcover!! 【セットリスト】 betcover!! 01.翔け夜の匂い草 02.バーチャルセックス 03.狐 04.鉄に生まれたら 05.母船 06.イカと蛸のサンバ 07.不滅の国 08.火祭りの踊り 09.炎天の日 10.あいどる 11.メキシカンパパ 12.フラメンコ 13.鏡 GRAPEVINE 01.Alright 02.EVIL EYE 03.HESO 04.Scarlet A 05.アマテラス 06.雀の子 07.実はもう熟れ 08.NINJA POP CITY 09.ねずみ浄土 10.SEX En.Glare En.光について
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