輪島ー門前「まるでワープ」 中屋トンネル、本社記者ルポ
●時間短縮、歓迎の声 25日再開へ見学会 能登半島地震で大きく損傷して通行止めが続く国道249号の中屋トンネルは25日、通行が再開される。輪島市中心部と門前地区を結ぶ「大動脈」であり、18日に開かれた現場見学会に参加した住民からは移動時間の短縮につながると歓迎の声が聞かれた。銀色に照らされ、まっすく伸びる様は「まるでワープトンネル」。私も幼い頃に何度も通ったトンネルに向かうと、思い出の道が復興への道筋を示しているように感じた。(輪島総局長・中野尚吾) 【写真】見学用のバスに乗り込む住民=輪島市門前町浦上 現場見学会は復旧工事を担当した国土交通省能登復興事務所が開き、地元住民35人が参加した。住民は輪島市門前町の浦上公民館からマイクロバスでトンネルに向かい、報道機関の車が続いた。 トンネルに入ると、すぐに復旧工事の特徴であるトンネルの形をした鋼製の防護壁「プロテクター」が見えてきた。高さ、幅とも4メートル。入り口と内部にLED(発光ダイオード)の照明がある。トンネルの中のトンネルをゆっくり進むと、真新しい銀色の壁が明るく照らされ、SF映画で見たワープトンネルのようだ。 ただ、左右の壁が近く、慎重にハンドルを握る必要があると感じた。車両の高さは3・8メートルまでの制限があり、住民を乗せたマイクロバスは少し窮屈そうだ。 能登復興事務所によると、中屋トンネルの通行止めが続き、輪島市役所から門前総合支所へ車で移動するには遠回りを余儀なくされ、所要時間は地震前の倍の50分かかっているのが実情という。 25日正午に地元車両と緊急車両の通行再開により短縮されるが、トンネル内は1車線で片側交互通行のため、数分程度の待ち時間が必要となる。トンネル近くに住んでいた宮下正賢さん(86)は中心部の市立輪島病院までの移動が楽になるとして「交互通行でも通行再開は大変うれしい」と喜んだ。 一方、別の住民からは「トンネル周辺にも片側交互通行の区間があり、待ち時間が長い。早く元の状態に戻してほしい」との声も聞かれた。能登復興事務所は今後も工事を進め、年内にトンネル内の対面通行再開を目指す。 私の母の実家は中屋トンネルの門前側から約2キロの場所にあり、子どもの頃は夏休みに泊まった。そして輪島朝市を訪れる時にいつも通ったのがこの中屋トンネルだった。地震で甚大な被害を受けても、一歩ずつ復旧は進む。思い出のトンネルに教えられた気がした。 ★中屋トンネル 石川県が整備し、1993(平成5)年に延長1.26キロで開通した。地震の影響で天井や壁のコンクリートが広範囲で崩れ、通行止めとなった。県に代わり、国交省が復旧工事を担っている。能登半島地震前は平日1日当たり約3千台の往来があった。