6億円の金塊、瀬戸内海に投下…釜山―大阪のクルーズ船を使い「瀬取り」で密輸図る
韓国・釜山(プサン)と大阪を結ぶクルーズ船を利用し、金塊を海上で受け取る「瀬取り」で密輸を図ったなどとして、海上保安庁などが韓国人と日本人の男ら計約10人を関税法違反容疑などで逮捕していたことが捜査関係者への取材でわかった。押収した金塊は約40キロ(約5億~6億円相当)に上り、同庁などは日韓の密輸グループの実態解明を進める。 【図解】一目でわかる…金塊密輸で利ザヤを稼ぐ仕組み
捜査関係者によると、男らは11月上旬、韓国から日本へ金塊約40キロの密輸を図るなどした疑いが持たれている。
手口は、覚醒剤の密輸事件で用いられたことがある洋上で受け渡す「瀬取り」だった。韓国人グループが、箱に隠した金塊約40キロを釜山発大阪行きのクルーズ船に持ち込み、瀬戸内海の愛媛県沖を通った際に海上に投下。日本人グループが船で回収した。事前に密輸の情報を得ていた捜査当局が、同県の港などで待ち伏せ、両グループを一斉に摘発したという。
日本に金を輸入する際は、税関で消費税を納める必要がある。同庁などは、男らが密輸で納税を逃れ、消費税分(5000万~6000万円程度)を上乗せした価格で買い取り業者らに売って得る「利ざや」を狙ったとみて調べている。
上半期押収量 前年比8倍超
財務省によると、全国の税関が摘発した金地金(金の延べ板など)の密輸は、消費税率が5%から8%に上がった2014年から急増し、17年には過去最多の1347件、押収量は約6・3トンに上った。その後、税率は19年に10%に引き上げられたが、新型コロナウイルス禍で国内外の往来が減少するなどし、19~22年は5~61件に激減した。
「有事の安全資産」とも呼ばれる金。近年はロシアのウクライナ侵略などで価格は急上昇し、高水準となっている。国内の金価格の代表的な指標となる田中貴金属工業の参考小売価格(1グラムあたり、税抜き)は、今年11月平均で1万3155円となり、10年前の約3倍になった。こうした中、今年上半期(1~6月)の摘発は228件と、23年の218件を既に上回り、押収量は937キロで前年同期比で8倍を超えた。
金塊の密輸を巡っては、航空機を使った手口が多く、今回のようなクルーズ船を悪用した「瀬取り」は珍しい。ある捜査関係者は「金の価格高騰と消費税率アップで増大した利ざやを一度に大量に運べる瀬取りで狙ったのでは」とみている。