「いつでもLAで収録」椎名林檎、GLAY…をプロデュースする亀田誠治が驚く、次世代デバイスと音楽制作の可能性
空間コンピューティングを体験してみて
亀田 引き込まれるというか、没入感がすごい。目線がカーソルになる、目線で意思決定できるなど、基本動作がシンプルでいいですね。私たち音楽家は耳の感覚に集中したいので、操作がシンプルなのは嬉しいです。 渡邊 体験していただいて「空間コンピューティングはこんな使い方ができそう!」など、何かピンと来たものはありますか? 亀田 例えばウォークマンって、自分の好きな音楽をどこにでも連れていけるという良さがありましたよね。自由を手に入れたというか(笑)。空間コンピュータでは、その幅がもっと広がるなと思いました。そして空間を自分なりにカスタマイズすることができ、好きな音楽、聞きたい音楽、観たい映画、それらを自分に一番フィットした状態で見られる。最高にリラックスして没入できるということですよね。 渡邊 カスタマイズって、昔からしてましたよね。カセットテープにマイリストを作って、好きな子にあげたりしませんでした? 亀田 やりましたね(笑)。私はレコードをたくさん持っていて、「亀ちゃんつくってよ!」と友人に頼まれたりなんかもして、マイリストが自分のアイデンティティだったりしたんですよね。空間コンピューティングで自分だけの空間をつくって、みんなを呼んで、飲みながらマイリストを聞いてもらい、「昔っぽいセンスを伝える」みたいなことを、やってみたいな。
空間コンピューティング時代のクリエイティブ活動
亀田 今のアーティストやクリエイターってめちゃくちゃ進化しているんですよ。演奏も上手いし、ハートもあって、自分の推しポイントもちゃんとあって。たくさん吸収しているから、幹が太い。現代は情報がたくさんあるので、クリエイティブの掛け算が起こって、素晴らしい作品が音楽に限らず色々なところで生まれてくるんじゃないかと思います。 渡邊 なるほど。空間コンピューティングでは他のクリエイターと一緒に作品づくりをすることもできると思うのですが、実際の音楽現場って今どうなっているんですか? 亀田 デジタルを使ったオーディオ作成は行われていますが、「やっぱり同じ部屋で顔を付き合わせて音を鳴らさなきゃね」というのがあります。僕も時々言います(笑)。でも、空間コンピューティングなら、同じ部屋でクリエイティブの環境も同じにすることができますよね。 渡邊 そうですね! 亀田 コロナ前から、複数人で楽曲制作をするコライトセッションをやっていたんです。ジャスティン・ビーバーの楽曲などで、作家の名前が20人くらい載っているやつ。私、あのひとりになりたくて……。月1回ロサンゼルスに行って、気持ちのいいリビングルームに、マイクを立てて、ピアノがあって、そこで1日で曲が完成するみたいな、素敵な空間があるわけですよ。それが空間コンピューティングなら、世界中どこにいてもコライトセッションができる。音楽やジャンルの国境もなくなってきそうですね。 渡邊 場所の制約が一気になくなりますからね。 亀田 昔はよく、ロスから帰ってくる飛行機の中で一曲作り上げたんだ! みたいなことを自慢してたんだけど(笑)、場所の限定もなく曲が作れるようになる。どこでもスタジオになるし、そのスタジオは自分のお気に入りの環境にできる。そこに仲間のミュージシャンを呼んで……。これはめちゃくちゃ楽しみ!