料理研究家の松田美智子さんが惚れる、まっとうな京都の洋食店2。
旨い店がごまんとある街だからこそ知りたい、食道楽の松田美智子さんが、京都でその店に通う理由。
まっとうな京都の洋食。
“洋食の素晴らしさを再発見しています” 2泊3日ぐらいで滞在する時は、一度は必ず、洋食店を訪れます。カウンターの店が多いので、ひとりで立ち寄ることができる気軽さも、選ぶ理由のひとつです。エビフライにしても、ビフカツやハンバーグにしても、仕事がていねいで、作り方にも美しさにもこだわった、きちんとした料理をいただける店が多い。 総じて、味がすっきりしているようにも感じます。東京では、自分で作ってしまうこともあって、外で洋食をいただくことは稀。それだけに、京都で洋食の素晴らしさを再発見しています。 この2軒は、タイプこそ違いますが、どちらも改めてそう感じさせてくれる良店です。
【京都市役所前】洋食おがた
最高の食材を馴染み深い洋食メニューに仕立てる人気店。 店主の緒方博行さんは、日本中から届く一級の食材を、最高の形で洋食に落とし込む名人。精肉の名店、滋賀『サカエヤ』の牛肉を使うハンバーグは、食材ありき。岡山のブラウンスイス牛のこともあれば、熊本のあか牛の時もある。 豚挽き肉を合わせてふっくら俵形にし、蒸し焼きのように火を入れたハンバーグは、肉の味がダイレクトに迫る。そこに、ビネガーなどを利かせた2週間かけて作るデミグラスソースが重なる旨味のパンチ力たるや……、予約が後を絶たないわけだ。
「いつ伺っても、デミグラスソースの鍋を混ぜている。自分の家では絶対に出せない味で、ハンバーグは外で食べるものになりました」
洋食おがた●京都市中京区柳馬場押小路上ル等持寺町32・1 TEL.075・223・2230 営業時間:11時30分~13時30分LO、17時30分~21時LO 火曜休、ほか月2回不定休あり
【祇園四条】洋食の店 みしな
祇園で愛され、育てられた西洋料理仕込みの花街洋食。 細かな衣に包まれ、ピンと伸びたエビフライ。その美しさも、初代が洋食の黎明期を支えた東京の名店で修業を積んだと聞けば、得心する。 祇園に店を構えたのは、1948(昭和23)年。西洋料理仕込みの端正な姿と上品な味、〝フライの後にさっぱりと〞と考案した〆のお茶漬けなどは、多くの文化人や芸舞妓を虜にしたという。 昭和の末に閉店するも、惜しむ声が後を絶たず、平成に二寧坂で再開。現在は、3代目が初代からの製法を変えることなく、花街の洋食を伝えている。