奄美の戦後史、多角的に解説 鹿大の平井名誉教授 奄美図書館で放送大学公開講座
放送大学鹿児島学習センターの公開講座が27日、鹿児島県奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。テーマは「戦後日本政治と奄美」。鹿児島大学名誉教授の平井一臣氏(66)が講師を務め、社会運動により住民が政治に参加してきた奄美の戦後史を多角的な視点からひも解いた。 奄美大島での公開講座は同館で年2回実施。この日は、履修生と一般の参加者ら約40人が聴講した。 平井氏は、奄美群島の戦後を「国際環境や国政に振り回された歴史」と表現。沖縄と本土のはざまに位置し資源が乏しく、外部に依存しやすい傾向を指摘した。 一方、奄美には強い自立志向が根付いているとし、住民らが復帰運動をはじめとするさまざまな社会運動を展開して政治に影響を与えてきた事例を紹介。「復帰運動の研究はたくさんあるが、それ以外は手薄。奄美の戦後の社会運動はいろんな観点から再検討される必要がある」と強調した。 1980年代、奄美群島から衆院選に立候補した保岡興治氏と徳田虎雄氏の支持を巡り、激しい選挙抗争が繰り広げられた「保徳戦争」も取り上げた。 平井氏は「奄美の人口が減り、大島紬などの産業も落ち込む中、将来への不安が高まり起きたのが保徳戦争。名瀬中心主義への対抗意識もあった。単なる政治家同士の戦いや利権の争いだけではなく、さまざまな思いが人々を選挙に駆り立て、社会運動の様相を呈した」と語った。 このほか、70年代に問題となった大島紬生産技術の韓国流出についても触れ、当時の日韓関係や両国の経済状況、奄美での抗議デモなどを説明した。 聴講した同市名瀬の女性(36)は「本土復帰だけでなく、多方面から(奄美の戦後が)説明されていて、分かりやすく面白かった」と話した。