経済効果100億円超、ジャイアン声優、Creepy Nutsもーー2次元×ラップ「ヒプノシスマイク」が生む新しい「リアル」
「ヒプマイ」人気の要因として、物語の世界観やキャラクター造形、声優陣の実力の高さといった、いわゆる「2次元」的な要素と、Zeebraやサイプレス上野、KEN THE 390など、ヒップホップ・シーンの第一線で戦うアーティストが参加することで生まれる、いわゆる「ストリート」的な感性も込められた楽曲との「衝突」が大きいだろう。ヒップホップ的な「ストリート感」や「リアル」が、ヒプマイの世界においての「リアリズム」と衝突することで接着し、そこに生まれた虚実のはざまが、ヒプマイの物語世界をより立体的に感じさせる役目を担う。 「だからR-指定も、普段のスキルを落とさずに書くことができたんだと思いますね」と話すのは、Creepy NutsのDJ松永だ。声優陣のラップの上手さにも驚いたという。 「声優さんが演じるパートには、実は今のヒップホップの最新のスキルを込めた、ものすごく難しいラップもあるんです。でもそれを見事に乗りこなして、しかも更に自分のカラーも込めている。本当に驚いたし、それだけこのプロジェクトに強い思いを持たれているんだなって。木村さんたち声優さんに僕らのラジオ番組で話を伺った時も、ラップに対する姿勢がすごく謙虚だし、真正面から真摯に取り組んでいて。それがあのクオリティ-につながってるんでしょうね」 一方で、「フェイクを嫌うヒップホップ・カルチャーの中で、ヒプマイがどう受け止められるかは、やっぱり不安だった」と木村は振り返る。 「僕が『俺は山田一郎、イケブクロ生まれの萬屋育ちだぜ』って言うのは、たしかに物語のキャラクターとしてです。実際の木村昴はドイツ生まれのクラシック育ちなんで(笑)。だけど、ヒプマイの世界の中では、山田一郎は息づいているし、どのキャラクターも、ヒプマイ世界の中では『リアル』。この作品のなかで鳴ってる『リアル』にリスナーが共鳴してくれるなら、ヒプマイも世界を塗り替えられるのかもしれないですよね」 R-指定も、ヒプマイの「リアル」についてこう考えている。 「僕は大阪出身なんで、関西弁でオオサカのリリックを書くのはすごく身近でリアルだったんですよね。同じように、日本にはたくさんラッパーがいて、例えば北海道だったらTHA BLUE HERBみたいに、それぞれの地域に根ざして活躍しているラッパーがいる。新しいディビジョンがもし生まれるなら、その地域に根ざしたラッパーやトラックメイカーが制作に関われば、『ヒプマイ』がよりリアルさを感じることができる世界になっていくと思うんですよね」