経済効果100億円超、ジャイアン声優、Creepy Nutsもーー2次元×ラップ「ヒプノシスマイク」が生む新しい「リアル」
「ジャイアン声優」が牽引するラップ
「ドラえもん」のジャイアンなど、人気アニメの声優としても知られる木村。実は、声優活動とは別にラッパーとしてユニットを結成し、楽曲もリリースしてきた。 「今のように認知される以前は、『ヒップホップは不良の音楽』みたいに、世間的なイメージはあまり良くなかった。だから、子供向けのキャラクターを演じてることもあって、ラップ活動を大っぴらには言ってこなかったんです」
たまたま自作のデモ音源がヒプマイ関係者の目に留まった木村は、山田一郎役に抜擢される。「好良瓶太郎」名義で歌詞を提供し、他の声優陣に対してヒップホップのレクチャーも担う。 「SNSでもヒップホップ作品を紹介しています。ヒプマイ経由でどんどんリスナーに『ヒップホップ沼』にハマってほしくて(笑)」 そのもくろみは見事に成功。オーディエンスの感触も変わってきたという。 「ファーストライブの時は、お客さんはそれまでの声優のライブと同じように、うちわやペンライトで応援してくれたんですけど、『それも嬉しいけど、ラップのライブだから手を上げて盛り上げてほしい』って話をしたんですよね。そうしたら、セカンドライブでは手を上げてくれるお客さんがすごく増えて。その日は『乙女たちがペンライトを置いた記念日』として祝日にしたいぐらい感動して(笑)。リスナーの皆さんが、ヒプマイという世界に寄り添って、僕らが提示したいカルチャーに理解を示してくれたことに、本当にしびれました。それ以降もお客さんの熱気はどんどん高まって。声優陣も生半可な気持ちじゃいけないなって、回数を追うたびに気持ちは強くなっていますね」
2次元世界とオーバーラップしていく「リアル」
ヒプマイの楽曲提供には、Zeebraを筆頭に、「ココロオドル」のヒットで知られるnobodyknows+など、人気・実力・知名度のそろった名前がずらりと並ぶ。そこに新たに加わったのが、Creepy Nutsだ。「どついたれ本舗」と呼ばれるオオサカ・ディビジョンの楽曲「あゝオオサカdreamin' night」を制作した。Creepy NutsのR-指定はこう話す。 「ヒプマイのリスナーが歌詞をめっちゃ掘り下げて、いろんな分析をSNSやネットに上げてくれるのは、作る側として本当に嬉しかった。ラップは、一つのセンテンスや韻に何重も意味を織り込んでたり、歌詞同士が掛詞(かけことば)になってたりなど、『仕掛け』や『構造の妙』がたくさんある。リスナーの指摘には『よくそこ気づいてくれた!』もあるし、『そこまでは考えてなかったな~』みたいな、深読みしすぎっていうのもあったり(笑)。でも、そういう読み込み方や分析が、いま自分がリリックを書く際の糧になってるし、リスナーも同じように楽しんでくれてるのかなって」