経済効果100億円超、ジャイアン声優、Creepy Nutsもーー2次元×ラップ「ヒプノシスマイク」が生む新しい「リアル」
ここまでの人気は予想外だった――。人気声優の演じる2次元キャラがラップをする音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」が、多くの「中毒者」を生み出している。「日本商品化権大賞2019」では、「経済効果は100億円超」と評価され、「ワンピース」や「ドラゴンボール」と並び、審査員特別賞を受賞。楽曲提供には、Zeebraを筆頭に、「ココロオドル」のヒットで知られるnobodyknows+、そして新たにCreepy Nutsも加わった。演じる声優本人も驚く熱狂。「ヒプマイ」はなぜここまでのムーブメントを引き起こすことができたのか。(取材・文:高木“JET”晋一郎/撮影:Yuichi Tagawa/Yahoo!ニュース 特集編集部)
日本発の「2次元ラップ」が100億円ビジネスに
「ヒプマイを聴いてラップをはじめました、MCバトルに出ましたって話を、最近よく聞くんです」 そう熱っぽく語るのは、「ヒプノシスマイク」、通称「ヒプマイ」で山田一郎を演じる声優・木村昴だ。 「ヒプマイを通じて友達ができた話もある。それって、このプロジェクトが誰かの新しい世界を開いたり、新しいコミュニティーを作ったってことだと思うんですよね。ヒップホップの始まりとすごく似ている」
ヒプマイでは、2次元のキャラクターがラップバトルを繰り広げる。ラップには人気声優が声を当て、その作詞・作曲は人気ラッパーやトラックメイカーが担当。いわゆる「アニメ好き」だけの人気ではなく、音楽としての魅力も大きい。双方のファンを取り込み、ラップ人気の裾野を広げた。
ヒプマイでは、2次元のキャラクターがラップバトルを繰り広げる。ラップには人気声優が声を当て、その作詞・作曲は人気ラッパーやトラックメイカーが担当。いわゆる「アニメ好き」だけの人気ではなく、音楽としての魅力も大きい。双方のファンを取り込み、ラップ人気の裾野を広げた。
「ヒプノシスマイク」では、「ディビジョン」と呼ばれる区画を代表するMCグループたちが、ラップを通してバトルを繰り広げながら物語が展開していく。2017年にスタートし、現在「イケブクロ」「ヨコハマ」「シブヤ」「シンジュク」「オオサカ」「ナゴヤ」の総勢六つのディビジョンと、18人のキャラクターがしのぎを削る。 ラップバトルを展開する「バトルCD」をリリースしているほか、YouTubeやサブスクでも公開。動画総再生回数は2億9000万回を突破している。この3月に開催予定だったメットライフドーム(2日間で7万人規模)でのライブチケットも完売していた。 さらに、コミカライズや2.5次元ミュージカル化などマルチメディア展開にも積極的だ。アパレルをはじめとして、商品化されたキャラクターグッズは約300アイテム。「日本商品化権大賞2019」では、「ヒプマイ」関連の経済効果は100億円を超えたと評価され、「ドラゴンボール」や「ワンピース」と並び、審査員特別賞を受賞した。 しかし「2次元キャラのラップを前面に押し出す」というコンセプトは、当初あまりに特異なアプローチだった。 「こんなにブームになるなんて。全く前例がないコンテンツなので、受け入れられるにしても、すごく時間がかかるだろうなと。実際、5年とか10年ぐらいのタームで考えようという話を制作陣ともしていたんです」 木村にとっても、わずか数年での「ヒプマイ人気」は予想外だった。 「ヒプマイを通じたヒップホップへの理解度の高まりと、キャラクターやストーリーの魅力。そこに声優陣の魅力だったりが組み合わさって、未知の魅力、オリジナリティーが生まれ、ヒプマイ人気は広がっていったように思います」