ECB、銀行の商業用不動産評価方法に「さまざまな問題」指摘
(ブルームバーグ): ユーロ圏の銀行監督当局である欧州中央銀行(ECB)は、商業用不動産ローンの裏付けとなっている担保を銀行が評価する方法に幅広い問題が判明したと指摘した。不動産市場の急落に対するもろさを銀行が過小評価している可能性を警告した。
2018年以降、銀行の担保評価の詳細を不動産鑑定士にたずねるなどして銀行作業の立ち入り検査を進めてきたECBは14日のリポートで、「銀行が担保評価を依頼する、または実施する方法に、さまざまな問題」が認められたと明らかにした。
その中には、銀行が「市場価値」を設定する際に、資産売却により現時点で回収が見込まれる額ではなく、将来的に実現可能と考える水準を基にしていることなどがあるという。市場の低迷期に銀行がその後の回復を織り込む評価を行うと、とりわけ誤解を招きやすくなる。この評価基準は「誤解されたり、誤って適用されたりすることが多い」とECBは断じた。
商業用不動産、特に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で需要が崩壊したオフィス物件について、投資家の間では銀行のエクスポージャーに懸念がある。家主や銀行は中央銀行の利下げが商業用不動産の需要を押し上げ、市場が底打ちすることに期待をかけているが、ECBは今回のリポートで、バリュエーションに問題が見られるためその期待は尚早だと警告した。
銀行はまた、「市場価値を膨らませる」ために開発プロジェクトで実現し得る最高の価格を評価基準として設定するなど、「不当な」会計上の慣例を適用していることや、「古く不適切な市場データ」を使って「現在の地合いや市場参加者の期待を無視している」との批判も受けた。
ユーロ圏では来年から、担保評価に値上がり期待を含めることができなくなる。
欧州銀行監督機構(EBA)によると、欧州の銀行が抱える商業用不動産ローンは約1兆4000億ユーロ(約227兆円)に上る。このうちおよそ18%が、信用リスクが大きく高まった「ステージ2」に分類されている。