日本のメディアで“知ったかぶり”しながら“講釈を垂れる”金融の専門家たち…投資のプロが「一切鵜呑みにしてはいけない」と断言するワケ
レポとは(2)外銀とヘッジファンドの投資手法
次に、日本や欧州など、米国以外の外国銀行も、前述の証券会社と似た立場です。すなわち、外銀は、貸出の機能は持っていますが、支店網がないため、貸出先は限定されるほか、家計や企業の預金口座も持っていないため、預金はありません。そこで、買い入れる米国債を担保に資金を借り入れるレポが用いられます。ちなみに、レポ以外にも、自国通貨を担保に米ドルを借り入れる通貨スワップ/デポ・スワップがあります。 そして、ヘッジファンドは、投資家と自分たちにとってのリターンを高めるために、投資家から集めた資金を、その何十倍分の金額の(たとえば)米国債に投資します。 典型的な例では、ヘッジファンドは、多額の米国債先物を売り、多額の現物米国債を買って、両者の価格差(理論値への収束)を得るような裁定取引を行います。裁定取引は、利幅が薄いため、取引額/ポジションを増やさなければ、投資家に対して目標リターンを提供することができません。 このとき、ヘッジファンドは、最初に投資家から集めた資金(=資本)で米国債を買い、買った米国債を担保にお金を借りて(=負債)、新たな米国債を買い、その米国債を再び担保にお金を借りて、新たな米国債を買い……」といったふうにして、買い持ち額をどんどん膨らませていきます。これはレバレッジと呼ばれます。 多くのヘッジファンドは、レバレッジをかける分(=借り入れによって投資金額を膨らませる分)、投資家に高いリターンを提供することを生業としています。
足元でレポ金利に上昇圧力
2018年-19年頃と同様、現在、レポ金利には上昇圧力が生じています。 図表2は、FRBの政策金利(=実効フェデラルファンド金利)【赤色】、その誘導目標レンジ【灰色の網掛け】、そして、翌日物レポ金利【青色】をそれぞれ示しています。 FRBの日々の仕事のひとつは、実効フェデラルファンド金利【赤色】を、誘導レンジ【灰色の網掛け】のなかに収めることです。ご覧いただけるようにそれは実現できています。 他方で、翌日物レポ金利【青色】は、利上げに沿うかのように、政策金利の誘導レンジ【灰色の網掛け】のなかで上限に近づいてきたことがわかります。 そして、翌日物レポ金利【青色】は、利下げ直後の今年の9月末に誘導レンジ【灰色の網掛け】を上抜けしています。「なぜ9月末なのか」は、このすぐあとに説明しますが、いずれにせよ、レポ金利の上昇は、レポ市場の資金需給がタイトになっていることを示しています。 実は、図表2をさらに細かくみると、レポ金利は昨年末にも上限を上抜けしていることがわかります。 「9月末の金利上昇」が「昨年末の金利上昇」と違うのは、【次の図】に示すとおり、9月末の同じ日には、この民間レポ市場からお金を借りられず、FRBの緊急流動性プログラム(スタンディング・レポ・ファシリティ)から、26億ドルの巨額の資金を調達する金融機関が出たという点です。 バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)には、中小規模の銀行など、すべての預金取扱機関が参加できます。 他方のスタンディング・レポ・ファシリティには、(財務省の米国債入札に直接参加できる)プライマリー・ディーラー(グローバルに事業を展開するような大手の証券会社)か、グローバルに事業を展開するような大手の銀行のみが参加できます。 2023年には、中小規模の銀行の資金繰りが困難になってBTFPが導入されましたが、今回は大規模の銀行または証券会社の資金繰りが困難になったということです。 四半期末や年末には、各金融機関は金融規制を守るために与信を絞ったりしてバランスシートをきれいにします。これは「ウィンドー・ドレッシング」と呼ばれます。この結果、四半期末や年末には資金需給がタイトになります。 確かに、そうした資金需給のひっ迫は(四半期末ごとに短期間生じる)一時的なことではありますが、逆に言えば、すべての金融機関が金融規制を守ろうとすると、資金繰りに困る金融機関が出てきたということです。それは、資金需給ひっ迫の証左です。 重見 吉徳 フィデリティ・インスティテュート 首席研究員/マクロストラテジスト
重見 吉徳