来年のNHK大河ドラマ「べらぼう」に出版界期待……ムック本や小説、評伝など関連本が続々
来年放送されるNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」の主人公、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)に関心が集まっている。戯作者の山東京伝(さんとうきょうでん)や浮世絵師の喜多川歌麿(きたがわうたまろ)など、江戸文化を彩った異才を見いだした人物だ。時代を先導した「仕掛け人」の数奇な人生を紹介した本も続々と刊行されている。(多可政史)
鈴木俊幸『新版 蔦屋重三郎』(平凡社ライブラリー)は、書籍文化史を専門とする研究者による名著だ。江戸時代後半の天明期と言えば、当時の多くの人が楽しんだ読み物である黄表紙・洒落(しゃれ)本といった戯作に狂歌、浮世絵などに代表される都市文化が華やかな時代だ。本書では現代の我々が思い描く「天明文化」「天明文学」そのものが、重三郎の「幻術によって創り上げられた部分が少なくない」と評する。当時の「前衛たち」の輪に入り、独自の「ブランド」を築き上げた異能の一代を活写している。
増田晶文『蔦屋重三郎』(新潮選書)は、サブタイトルで重三郎を「江戸の反骨メディア王」と位置づける。編集担当者は「本の冒頭に人気作家による推薦文を入れたり、売れっ子作家を囲い込んだり。編集者視点で見ると、重三郎は我々の仕事の先駆けのようなことをしていた人物だったことが分かる」と指摘する。
綱紀粛正が図られた「寛政の改革」では言論統制を強める幕府の指針にたてつき、財産を没収された。そのおもねらない姿に、江戸の庶民たちは喝采を送る。当時、発展する「メディア」だった出版を武器に大衆の心をつかんだ「プランナー」としての足跡は、インターネットやSNSが発達する現代にも示唆に富む。
2人の天才
ムック形式の本も相次いで刊行されている。Pen Books『蔦屋重三郎とその時代。』は重三郎が制作・流通に携わった書籍や浮世絵のカラー写真を豊富に掲載した。編集担当者は「大河ドラマの副読本としても手に取っていただけたら」と話す。