来年のNHK大河ドラマ「べらぼう」に出版界期待……ムック本や小説、評伝など関連本が続々
浮世絵研究の第一人者、浅野秀剛さんのインタビュー「歌麿と写楽、蔦重が見出(いだ)した2人の天才。」も掲載した。喜多川歌麿の美人画、東洲斎写楽の役者絵という江戸期の2大ヒット作の仕掛け人だった重三郎の功績を紹介している。
別冊太陽『蔦屋重三郎』に収録されている日野原健司「蔦重と葛飾北斎」は、寛政年間(1789~1801年)に深い仲を築き、武者絵や役者絵など数多くの作品をともに手がけた両者の関係が次第に希薄になった過程を分析する。一方で、初代に比べ影が薄い「二代蔦重」との関係の方が良好だったとの指摘も興味深い。稀代(きだい)の商才を誇った「初代蔦重」でも、作家との相性があったことを物語る。
中央公論新社からは、『歴史と人物21 蔦屋重三郎 江戸文化の仕掛け人』が刊行された。
現代にヒント
重三郎をモデルにした小説も刊行されている。谷津矢車(やつやぐるま)『憧(あくが)れ写楽』(文芸春秋)は、彗星(すいせい)のように現れて活躍した後、姿を消した「謎の絵師」写楽の真相を追究する江戸の版元に対し、写楽を売り出した張本人である重三郎がなぜか妨害しようとする様子を描いた歴史ミステリーだ。
「企画の鬼」「敏腕プロデューサー」「理想の起業家」――。たぐいまれなる重三郎の手腕からか、書店に並ぶ本を見渡すと、現代のビジネス書に通じるような副題や宣伝文句が付けられている本が目立つ。重三郎の波瀾万丈(はらんばんじょう)人生から、正解のない現代社会を生き抜くためのヒントが見いだせるかもしれない。