民主党が勝つのは「共和党がコケた時だけ」 南北戦争から続いた、大統領選のジンクス
4期12年にわたる民主党政権の誕生
さて、何度も見てきました「民主党が政権を握るのは共和党が勝手にコケたときだけ」という原則は今回も働き、共和党が大コケした1932年の大統領選で勝ったのは民主党のフランクリン・デラノ・ルーズヴェルトでした。 これまで、共和党は頑なに18世紀に生まれた旧い経済学説(古典派)に執着し、それで破綻したのですから、彼は古典派の不備を批判して20世紀に生まれた新説「ケインズ経済学」に拠った改革を行おうとします。 しかし、旧い時代から新しい時代へと切り替わるとき、どうしてもそれが理解できない"老害"らが改革を握りつぶそうとしてくるのは避けられません。(※9) このときも、ルーズヴェルトはただちにケインズ的経済改革「ニューディール政策」に着手しますが、古典派の正義を信じて疑わない抵抗勢力から非難・糾弾・妨害の限りを受け、ニューディールの柱のひとつ「全国産業復興法」に至っては最高裁まで戦って違憲判決を受けたほど。 しかし、ルーズヴェルトの不屈の精神によってこれら抵抗勢力と戦い、経済は復調の兆しを見せてきたため、その成果を受けて2期目の大統領選(1936年)ではルーズヴェルトが記録的圧勝(※10)を果たします。 しかし、2期目は抵抗勢力の頑強な妨害もあって思ったほどの経済的成果を挙げられず、経済は停滞、その結果、共和党の支持も復調の兆しを見せたものの、いまだ「世界恐慌を引き起こした戦犯」という烙印は拭えず、3期目の大統領選(1940年)もルーズヴェルトが勝利。 4期目の大統領選(1944年)は戦争特需(第二次世界大戦)で経済復興が進んだため、これも勝利。 こうして彼は、アメリカ合衆国史上唯一「4期務めた大統領(※11)」となりましたが、それは彼が優秀だったからというより(優秀でないとは言いませんが)、時代背景が「世界大恐慌から第二次世界大戦」という激動の時代だったためといった方が正解に近いでしょう。 [注釈] (※9)旧い伝統政策から新時代を支える革新政策への移行は"一足飛び"というわけはいかず、かならず"新旧の壮絶な綱引き"が行われる期間がある。 (※10)全国48州(当時はまだアラスカとハワイが準州でした)のうち、対立候補(ランドン)が勝ったのはたったの2州、他46州すべてでルーズヴェルトが勝利するという圧勝でした。 (※11)「3期務めた大統領」すらフランクリン・ルーズヴェルト以外ひとりもいません。
神野正史(元河合塾世界史講師)