日本馬の勝利ならずも、確かな“可能性”を見い出したブリーダーズカップデー。伏兵ローシャムパークの激走が意味するもの
BCターフは僅差の決着。BCマイルも大健闘の結果に
【BCターフ】 「ターフ」(芝2400m)に出走したのは、一昨年のドバイシーマクラシック(G1)で優勝、今年は2着の実績を持ち、昨年のBCターフ(G1)でも3着に入っている日本ダービー馬のシャフリヤール(牡6歳/栗東・藤原英昭厩舎)と、重賞2勝で大阪杯(GⅠ)を2着しているローシャムパーク(牡5歳/栗東・田中博康厩舎)だ。 2頭とも前半は後方からレースを進め、直線では抜け出したレベルスロマンス(せん6歳/英・C.アップルビー厩舎)を目掛けて7番人気のローシャムパークが猛追。馬体を並べてゴールしたが、ローシャムパークはクビ差で悔しい2着となった。また、シャフリヤールも後方から外を通って怒涛の追い込みを見せて3着に食い込んだ。中長距離の芝馬が世界レベルにあることを改めて世界にアピールした。 特に驚かされたのは、あと一歩まで迫った伏兵・ローシャムパークである。ルメール騎手は「2400mは少し長いと思うが、よく頑張ってくれた。凄くいい脚を使ってくれたので、2着に負けたけど嬉しい。負けたけど、凄いです」と興奮気味にその走りを賞賛した。GⅠタイトルを持たずとも、適性が合えば世界レベルのレースでも好走できるという点では、日本馬のなかには海外へ遠征する価値がある馬が、まだ眠っているのではないかという可能性を示したのが、今年の「ターフ」だと感じた。 【BCマイル】 「マイル」(芝1600m)に出走したのは、一昨年の皐月賞馬ジオグリフ(牡5歳/美浦・木村哲也厩舎)と、今年のヴィクトリアマイル(GⅠ)を制したテンハッピーローズ(牝6歳/栗東・高柳大輔厩舎)の2頭である。 序盤からテンハッピーローズが2番手、ジオグリフが3番手と積極的にレースを進め、直線の半ばではテンハッピーローズがいったん先頭に躍り出るが、中団から伸びてきたモアザンルックス(牡4歳/米・C.ドゥヴォー厩舎)らの急襲に抵抗しきれず4着。ジオグリフは内からじりじりと脚を伸ばして5着となった。 津村明秀騎手が「4コーナーを回って先頭に立ったときは夢を見ました」とコメントしたように、テンハッピーローズは、敗れはしたものの大健闘。14番人気で勝ったヴィクトリアマイルのレース後に「この勝ちはフロックではない」と口にした津村騎手の見立て通りの力を見せた。またジオグリフも一時の低迷から脱しつつあり、現状での力を出し切っての入着となった。 その他、「BCディスタフ」(牝、ダート1800m)に出走したアリスヴェリテ(牝4歳/栗東・中竹和也厩舎)は、前半は後方追走を余儀なくされたが、直線で追い込んで4着に食い込んでいる。なお、オーサムリザルト(牝4歳/栗東・池江泰寿厩舎)は獣医師の検査で歩様に異常が認められたため出走取消となった。 勝利こそなかったが、日本馬にとって実り多き開催となった今年のブリーダーズカップデー。フォーエバーヤングの矢作調教師が早くも来年のリベンジを誓い、世界のトップ・オブ・トップを狙う意思を見せている。来年もまた熱い戦いを見せてほしいと願うばかりである。 文●三好達彦
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