漱石第6旧居、どう活用? 熊本市「親しみを持つ場所に」 飲食、宿泊施設案も
熊本市は、今年3月に取得した熊本市中央区北千反畑町の夏目漱石第6旧居について、文化施設として保存・整備しつつ、飲食店や宿泊施設など新たな活用方法を検討している。市文化財課は「漱石が住んでいた当時の建物の雰囲気を生かしながら、多くの人が親しみを持って訪れる場所にしたい」としている。 市文化財課によると、第6旧居は1900（明治33）年ごろに建てられたとみられ、漱石が第五高等学校（現熊本大）の英語教師として熊本で過ごした4年3カ月のうち、最後の約4カ月を暮らした。漱石が2階からの眺めを気に入っていたと伝わり、漱石の書斎が当時の姿のまま残っている。作家の村上春樹さんも訪れている。 所有者が高齢で維持できなくなり、市は文化財として保存すべきと判断。熊本地震で被災した文化財などの復旧復興を目的とした基金から財源を確保し、建物（木造2階建て、延べ床面積約160平方メートル）と、隣接する敷地も含めた土地約610平方メートルを計約1億円で取得した。
市は活用方法について、民間事業者などから提案があった①カフェなどの飲食店②民泊などの宿泊施設③その他（自由記述）の3項目を挙げて地元住民らにアンケートを実施している。 市文化財課は現在、漱石旧居2カ所を含む記念館など14の歴史文化施設を所管しているが、いずれも飲食、宿泊施設として活用された例はない。同課は「大江と内坪井の二つの旧居が漱石関連資料などを展示する記念館として運営されている中で、第6旧居も旧来通りにするのか、違う活用ができるのか。若い人も含めて多くの方々に漱石文化を知ってもらえるような施設にしたい」と説明する。 県内外の漱石愛好家でつくり、漱石の魅力や情報を発信する「くまもと漱石俱楽部」の吉村隆之会長（68）は「県内はもちろん県外からもたくさんの人に来てもらうため、三つの旧居が違った特徴を打ち出して有効活用してほしい。飲食、宿泊施設という市の案には賛成だ」と歓迎する。 市は本年度中に活用方針を決め、2027年度以降のオープンを目指す。市文化財課は「漱石旧居は全国でも四つしか現存しておらず、とても貴重。国登録有形文化財を目指しており、保存すべき部分はきちんと保存したうえで活用を模索したい」としている。
アンケートは第6旧居がある碩台小校区の住民が対象で、校区外の市民らの意見は市文化財課で受け付ける。同課☎096（328）2740。（前田晃志）
