パリオリンピック男子バレー 日本は「史上最強」を証明もイタリアに惜敗 「最後の1点」で勝負を分けたのは何か
イタリアには総じて球技に"守備の文化"がある。守ることに耐性があるのだが、それは我慢強さとは違う。 〈攻めてみろ、痛い目に合わせてやる。自分たちの苦しみは快感に変わる〉 イタリア人は、そうしたマゾヒスティックに近い攻撃姿勢を保てるのだ。この日、息も絶え絶えになりながら、彼らは信じて戦い方を変えなかった。サーブで積極的な姿勢を貫き、実らせたのは象徴的だった。セットカウント1-2としたあとは、さらに攻めのサーブで優位に立つ。大会屈指のブロックが当たりだし、4セット目は5本のブロック成功だ(日本は西田の1本のみ)。 「ジャネッリがサービスエース。AEDで心臓を動かした!」 イタリア大手スポーツ紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』は、独特の表現をしている。イタリアは日本のわずかな出血に興奮したかのように、そのまま勢いに乗って攻め立て、日本の息の根を止めた。 日本は5セットを通じ、「バレー」の楽しさを感じさせるプレーをしていた。『ガゼッタ』紙が「今大会のベストリベロ」と高く評価した山本智大を中心に、ディグやブロックフォローなどのディフェンスで持ち味を出し、オポジットの西田も、両チーム最多3本のサービスエースで攻撃を引っ張った。日本男子バレーの歴史に残る一戦で、史上最強であることをあらためて証明した。 それだけに、惜しかった。 「世界を相手にして、今日は結果を残せなかったです。でも、みんなともに歩んできて、ステップアップしてきたチームだと思います。ネーションズリーグでメダルを獲ったり、今日も非常に強いイタリアと互角に戦って、あと一歩まで......」 石川は言った。偉大なる凱歌をあげる、その前夜だ。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki