令和の新入社員が「ほめてくれる上司」を求める納得の理由
▼悪いほめ方 悪いほめ方は、いま紹介した「良いほめ方」の反対です。あいまいにほめると、本人は何が良かったのか理解できません。また、ほめる基準をつくらずにほめると、行き当たりばったりになってしまいます。 そしてもう一つ、「ずいぶん時間が経ってから、思い出したようにほめる」といったほめ方も、大きな効果が期待できません。原則すぐほめる、周りに人がいれば場所や時間を見てほめる、というのが意識したいポイントです。
ほめる教育がもたらす効果
令和の新入社員にほめる教育を行うと、さまざまな効果が期待できます。 ▼やる気を出す 低成長の日本経済を見て育った彼らは現実的です。そのため「今の若者は冷めている」「物事に熱中しない」という印象があるかもしれません。決して、そんなことはありません、自分の興味があること、働き方改革やジェンダー平等など社会課題に関することには、積極的に関わります。 ですから、彼らの好奇心の芽を見つけてほめれば、やる気に火がつきます。そして予想をはるかに超える行動を始め、感動すら覚えるような能力アップを果たします。 ▼離職率が下がる ほめる基準が決まっていれば正しくほめられ、理不尽な怒られ方をすることもなくなります。すると彼らは失敗を怖がらず、のびのびと提案や挑戦をするようになります。こうなれば彼らにとって、会社は成長できる大切なフィールド。人間関係も心地いいため、離職率はぐっと低下します。 ▼チーム全体が元気になる ほめることは互いの距離を縮め、チームを活性化させます。上司や先輩が彼らに対し「何を考えているか分からない」と距離を置き、陰で愚痴をいうチームと、「よく頑張っているな」「笑顔が見られてうれしい」と応援する気持ちで接し、ほめ言葉をかけるチーム。どちらの方が伸びるでしょうか? 答えは言うまでもないでしょう。
ほめる教育が安全地帯をつくる
日本人の多くは、ほめることを苦手としています。謙遜を重んじる文化があるため、ほめ言葉を使うことに慣れていないのです。ましてや昭和生まれは、年功序列や終身雇用が身近な世代。上司や先輩の言うことは絶対だったし、思いきり叱られることはあっても、ほめられた経験は皆無かもしれません。 でも、令和の新入社員は承認されて育ってきたのです。違いを理解せず、従来の教育を続けるとどうなるでしょうか? せっかく採用した新入社員も、「この会社に自分の居場所はない」と退職してしまう可能性があります。また、休職する社員も増えてきており、復帰しても居場所がなかったり、退職する決断ができず、休職を繰り返してしまうケースもあります。そうなれば、かけたコストは無駄になってしまいます。 しかも本人がインターネットやSNSで、悪い噂を流す可能性もゼロではありません。そうした情報は消えず、企業の採用ブランド力は低下。ますます採用が難しくなり、採用担当者のモチベーションも低下、顧客減も招くかもしれません。 現場で育成にあたる上司や先輩、そして人事担当者や経営者は、危機感をもたなくてはいけません。「ほめる? そんな、とんでもない!」と言う時代は終わりました。ほめる教育をして、彼らにとっての"安全地帯"をつくってあげてください。 彼らは、ほめられるために入社してきました。ほめるために、入社させたのです。 「君は我が社にとって重要な人間だよ」と声をかけてあげてほしいのです。彼らの可能性を、本人よりも信じて言葉をかけ続ける。そうした教育が求められています。人材育成は、本当に大変で手間暇がかかりますが、部下育成は自分育成。自分も成長していくイメージを持ち、楽しみましょう。
原邦雄(株式会社スパイラルアップ代表取締役)