取材に応じた『令和ロマン』の二人。松井ケムリ（左）と髙比良くるまが、「人気を得ること」と「やりたいお笑い」の間で揺れる、若手芸人のリアルを素直に語る

今やすっかり定着した感のある推し活。俳優やアイドルだけでなく、芸人を推しと公言するファンも多い。一方、実力主義のお笑いの世界では、人気先行の芸人を「ワーキャー（芸や実力ではなく、ルックスやキャラクター目当てのファンのこと）」枠と白い目で見ることも。はたして芸人たちは「人気」というものをどう考えているのだろうか。そこで、人気と実力を兼ね備えた次世代ブレイク芸人の令和ロマンに、「人気」に関する本音に迫った。 【画像】すごい…！　“過去最高！？”にカッコつける『令和ロマン』の二人「イケイエのイケメン」ショット…！ ◆芸人は「人気」とどう向き合うのか ――直球ですが、芸人さんもやっぱり人気者になりたいという意識はあるんですか。 松井ケムリ（以下、ケムリ）：人気者を目指して芸人やってるという人はいない気がしますね。ネタが面白かったら、自然と人気がついてくるという感じですかね。 髙比良くるま（以下、くるま）：やっぱり芸人のモチベーションは、あくまで面白いネタをやること。とはいえ、人気がないと食えないのは確か。芸人になって最初の目標は、バイトを辞めることなんですよ。芸人一本でメシが食えるようになりたい。そのためには集客ができないと厳しいよねという話で。 ケムリ：ある程度の人気がないと単独ライブが埋まらないとか、そういうのはあるね。 くるま：バイトしている間はプロじゃないっていう葛藤が芸人の間ではあるわけですよ。そこから早く抜け出すために、インスタで質問に答えますとか、出待ち対応を一生懸命頑張るとか、そういう草の根活動で人気を集めていくのは芸人の中でもあるかな。

ともに慶応義塾大学のお笑いサークル「O-keis」出身。昨年の『M-1』では、惜しくも準決勝で敗れるも、敗者復活では２位に食い込んだ。今年の『M-1』も現在進行形で挑戦中

「トガってるんじゃなくて、スカしてるだけ」 ――ネタ以外の部分で人気を得ようとするのは邪道みたいな考え方って、芸人さんの間でもありそうですが。 くるま：吉本でそういうこと言ってる人は腹立ちますよね（笑）。それを言ってカッコいいのは、東京ダイナマイトさんとか金属バットさんだけだから！　そこを勘違いして、スカしたムーブをとるのが最近流行ってるんですよ。 ケムリ：吉本という王道にいるのに、地下に潜りたがるっていうね（笑）。 くるま：でもそれって相当才能のいる作業だから。人気を得る努力をないがしろにしてバイトに明け暮れて。そのせいでネタを考える時間が減ってるのに、それが芸人だと言ってる人を見ると、そのスタンスは結構ギャンブルだなとは思います。 ケムリ：本当にそう。 くるま：トガってるんじゃなくて、スカしてるだけの場合もあって。そこは間違っちゃいけないぞと。 ――トガっているという話で言うと、昔はトガってた芸人さんが人気者になると丸くなって面白くなくなった…みたいな話はあるあるな感じがします。 くるま：僕も昔は素人考えでそう思ってたんですよ。でも、売れてる先輩と劇場で一緒になったときに考えが変わりました。と言うのも、めっちゃ面白かったんですよ、その先輩が。 ケムリ：それだけ売れている人の場合、テレビに出るときは力を抑えて出ているパターンが多い気がしますね。 くるま：そうそう。丸くなったんじゃなくて、丸いことを言うようにしてるだけ。 ケムリ：そうやってテレビサイズに笑いをアジャストできる能力があるから売れたとも言える。 ◆「仕事」と「自分達の笑い」　理想のバランスは？ くるま：どの仕事を取っていくかは、自分で決める話。お金を稼ごうと思ったら、そりゃ大衆に刺さる笑いをやった方がいいんですよ。その分、劇場に足繁く通うようなコアファンは離れていくかもしれない。でも、全員を幸せにはできないですから。1000人のお客さんがいるとして、トガった新ネタで100人のコアファンを笑わせるか、残りの900人のお客さんに向けた笑いをするかという話で。 ケムリ：そりゃ900人を笑わせられる方がエラいよね。 くるま：エラいね。仕事という意味でのプロの部分と、自分の笑いを追求するアーティスト的な部分。芸人としてその兼ね合いをどうするかだと思います。 ――お二人はどちらを取るんですか。 くるま：今の僕たちなら、９:１だと１の方を大事にします。一時期は９を取りにいったこともあるんですよ。でも、中途半端で結局どっちも満足しない結果になったんで、やめました。９を取りにいけるのって、相当売れている人の話だと思います。