ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
<国際法違反の誹りを嫌ってか、ロシアの戦争に投入した北朝鮮兵も、死ぬと存在さえなかったことにしようとする酷薄さ>
ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、X(旧Twitter)への新たな投稿で、戦死した北朝鮮兵の顔をロシア軍が焼いている、と主張した。 【動画】ロシア兵が倒れた北朝鮮兵の顔を焼く場面──ゼレンスキーのX投稿より 北朝鮮の兵士がロシアに派遣されていることを隠蔽するためだ、とゼレンスキーは指摘。「戦死した兵士の顔を焼いている様子」とする動画も添付している。 本誌は、この動画やゼレンスキーの主張を独自に確認できていない。 本誌はこの件に関し、ウクライナ国防省、英国の北朝鮮大使館、ロシア国防省に電子メールでコメントを求めた。 ロシア軍の人的損失を補うために、北朝鮮の兵士たちがウクライナとの戦争に参加している。派遣先として多いのは、ウクライナが8月はじめに越境作戦を開始した露クルスク州の前線だ。 クルスク州における北朝鮮兵の死亡を最初に伝えたウクライナ国防省情報総局は、こう記している。「クルスク州での積極的な戦闘を継続するために、特に朝鮮人民軍第94独立旅団から、新たな人員が補充されている」 兵士の顔を焼いているとの主張は、ロシアで戦っている北朝鮮兵のうち少なくとも30人が12月中旬までに、クルスク州のプレホボ村、ヴォロジバ村、マルティノフカ村付近で死傷したとの情報が伝わると共に広がってきた、とロイター通信は封じる。 北朝鮮兵は「存在しない」 ウクライナは以前、推定1万1000人の北朝鮮兵が、ロシア軍とともに戦うためにクルスク州に展開されていると述べていた。 米国防総省のパトリック・ライダー報道官は12月16日、次のように述べた。「北朝鮮兵がクルスク州での戦闘に参加していると我々は判断している。(中略)彼らに死傷者が出ている兆候もつかんでいる」 ロシアは、北朝鮮兵の存在について肯定も否定もしていない。北朝鮮政府は当初、派兵の報道を「フェイクニュース」だと否定した。 ロシアは、ウクライナがクルスク州への越境攻撃で制圧した地域の約40%を奪還したが、ウクライナのさらなる前進を押し返すために、北朝鮮兵を含む5万人の兵力を展開している。 北朝鮮兵は先週、クルスク州で初めてウクライナ兵から村を奪還したとの情報も、テレグラムなどを通じて流れている。 ゼレンスキーは、Xへの投稿で次のように記している。「何年も戦争が続くなかで、ロシア人はこれ以上酷薄にはなりえないと思っていたが、さらにひどいことが起こっている。ロシアは北朝鮮兵に、ウクライナ軍の拠点を攻撃させるだけでなく、北朝鮮兵の損失を隠そうとしている。彼らは、北朝鮮兵の存在を隠そうとしている。訓練中は、彼らは顔を出すことも禁じられていた」 「この狂気を止めろ」 「ロシアは、彼らの存在を示すいかなる証拠映像も消し去ろうとした。そして今、ウクライナ軍との初めての交戦の後、ロシアは、戦死した北朝鮮兵たちの顔を文字通り焼き消そうとしている。これは、敬意の欠如、すなわち現在のロシアに蔓延する、あらゆる人間的なものを軽視する態度の表れだ」 そこまでして正体を隠そうとするのは、北朝鮮の参戦は国際法違反だという各国からの非難をかわすためなのか。 「北朝鮮の人々がプーチンのために戦い、死ぬ理由など何一つない。そして死んだ後でさえ、ロシアが彼らに与えるのは屈辱だけだ。この狂気を止めなければならない。確実で永続的な平和によって。そして、この利己的な戦争に対するロシアの説明責任によって」 ジャーナリストでライターのポーラ・チャートクは、Xで次のように記した。「なんという野蛮な行為。(シリアの)アサド前大統領はロシアで安全に過ごしている。一方でロシア政府は今、ロシアの戦争に北朝鮮兵が参加した証拠を隠すため、戦死した北朝鮮兵の顔を焼くよう命じているらしい」 戦争が続くなかで、北朝鮮兵が前線での戦闘にどれほど貢献するのか、また、ロシアがウクライナから奪取した領土を守るのにどれほど役立つのかは、現時点ではわからない。 (翻訳:ガリレオ)
マヤ・メララ