イスラエル首相らに戦争犯罪容疑で逮捕状発行、ICC 日本含む124カ国に逮捕義務 ガザでは「遅すぎた」との声
国際刑事裁判所(ICC)は21日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に対し、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を発行したと発表した。発表はイスラエル国内で激しい怒りを招いたが、イスラム組織ハマスはイスラエル指導者への逮捕状発行を歓迎した。一方、戦闘が続くパレスチナ自治区ガザで避難生活を送る人々からは、決定は「遅すぎた」との声が聞かれた。 国際刑事裁判所(ICC)は21日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相、それにイスラム組織ハマスの幹部に逮捕状を発行した。容疑は、ガザ紛争における戦争犯罪および人道に対する罪。この発表はイスラエル国内で激しい怒りを招いたが、ハマスはイスラエル指導者への逮捕状発行を歓迎した。 ICC判事らは、ネタニヤフ首相とガラント氏が「パレスチナ自治区ガザの民間人に対する広範かつ組織的な攻撃」において、殺人や迫害、戦争の武器として飢餓を利用するという行為について刑事責任を負っていると信じるに足る十分な根拠があると述べた。 一方、ハマス幹部イブラヒム・アルマスリ氏に対しても、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を発行。ガザ紛争の引き金となった23年10月7日のイスラエル奇襲における大量殺人、性的暴行、人質拘束の容疑も含まれる。同氏についてイスラエルは7月の空爆で殺害したとしているが、ハマスは否定も肯定もしていない。検察は同氏死亡の可能性について引き続き情報収集を行うもよう。 イスラエル首相府はICCの決定を「反ユダヤ的」と非難し、イスラエルの戦争目的が達成されるまでは譲歩しないと述べた。 「なぜ我が国の首相に逮捕状?」 テルアビブではネタニヤフ氏の支持者らが反対の声を上げた。ある女性は「反ユダヤ主義が起こっていることを知らないのか?イスラエルはそれと戦う唯一の国であり、ハマスと戦っている。ハマスはいまだに101人の人質を取っている」と述べ、怒りをあらわにした。 ハマス幹部はロイターの取材に対し、逮捕状発行は正義への第1歩だと語った。 だがガザ南部のハンユニスで避難生活を送る人々からは、決定は「遅すぎた」との声が聞かれた。ある男性は「彼(ネタニヤフ首相)は10月7日の事件を口実に、ガザ地区で犯罪を犯した。ガザ地区(で標的になったの)はテロリストではない。子供や老人、女性だ」と語った。 イスラエルはハーグに拠点を置くICCの管轄権を認めず、ガザでの戦争犯罪を否定している。 イスラエルの後ろ盾である米国もICCの加盟国ではなく、米国家安全保障会議(NSC)の報道官は21日、この決定を「根本的に拒絶する」と表明した。 だが欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は、ICCの決定は尊重され、実行される必要があると述べた。 EU ボレル上級代表 「これは裁判所の決定であり、司法裁判所の決定であり、国際司法裁判所の決定だ」 ICCは逮捕を実行するための独自の警察部隊を持たず、代わりに日本を含む124の加盟国に依存している。