「歌うクジラ」のザトウクジラは息を止めたまま歌い続けられる、どういうこと?
夏には北極や南極近辺で食事し、冬には赤道近辺の暖かい海で繁殖
ザトウクジラは、世界中の海のはるか彼方まで届く不思議な鳴き声を出すことで知られている。うめき声やわめき声、叫び声のような音の反復は非常に複雑で、何時間にもわたって続く。 【動画】幻の「白いザトウクジラ」 全身真っ白! おまけに、ザトウクジラは息を止めたままでも歌える。その仕組みは長年にわたり謎だったが、2024年の研究で、「喉頭嚢(こうとうのう)」と呼ばれる空気を入れる袋のような器官にある脂肪のクッションが振動して音を出していることが報告された。ザトウクジラがこのような鳴き声を出すのは仲間とのコミュニケーションや求愛のためだとされている。 ザトウクジラは海岸線でよく見られ、エビに似たオキアミやプランクトン、小魚などをエサとしている。ザトウクジラは年間を通して回遊しており、夏には北極や南極近辺で食事して、冬には赤道近辺の暖かい海で繁殖をする。 母親は子に寄り添って泳ぎ、互いのヒレを触れ合わせる行動を取ることがあるが、これは愛情表現だとされている。メスは約1年間子どもを育てるが、ザトウクジラが完全に成長するにはさらに長い年月がかかる。子どもは10歳まで成長を続ける。 ザトウクジラはフロックと呼ばれる巨大な尾ビレを使って力強く泳ぎ、時には水面から全身が出てしまうほど跳び上がることがある。ほかのクジラと同様に、水面から跳び上がって豪快に着水する。皮膚に付いた害虫を落とすためなのか、ただ単に遊びで行っているのか、この行動にどんな意味があるのかは解明できていない。
ナショナル ジオグラフィック 日本版編集部