パナソニックAIを収益の柱に…米新興企業と提携し生活支援サービス「Umi」に注力
米ラスベガスで7日に開幕した世界最大級のテクノロジー展示会「CES」で、パナソニックホールディングス(HD)はAI(人工知能)関連事業を強化する新戦略を打ち出した。生成AIを手がける米新興企業との業務提携を発表し、家庭向けAIエージェント(代理人)サービスを提供する。生成AIが加速度的に普及する中、新たな収益の柱に据えたい考えだ。(ラスベガスで、坂下結子)
「家族と一緒になにができるか」「以前、水族館がお好みだったので、アザラシ保護区はどうでしょう」――。CESの展示会場にあるパナソニックHDのブースでは、大型ディスプレーに利用者と対話型AIのやり取りのイメージ動画が流れ、大勢の来場者から注目を集めていた。 パナソニックHDが開発した日常生活を支援するアプリサービス「Umi(ウミ)」だ。米国で今年から提供を開始し、日本での展開も視野に入れる。担当の松岡陽子執行役員は「AIが家族のことを学び、パートナーのような存在になる。家族の負担を減らしたい」と述べた。
Umiに欠かせないのが、AIを手がける米新興企業アンソロピックの対話型AIだ。旅行会社や食料品配達会社などの複数企業と連携し、話しかけると旅先の提案や家族のスケジュール調整などをしてくれる。 アンソロピックは生成AIの分野で「チャットGPT」を開発した米オープンAIに次ぐ占有率(シェア)を持ち、世界のスタートアップで企業評価額トップ10に入る。この有望企業との提携発表は、各国の報道陣を驚かせた。
売上高の30%
この日、CESの開幕を飾る基調講演に登壇したパナソニックHDの楠見雄規社長は、AIを軸にした成長戦略「パナソニックGo」を提唱。関連事業の売上高に占める割合を2035年までに現在の10%弱から30%まで高める目標を示し、「(AI事業の強化に向けた)変革はパナソニックの全てを変えるだろう」と強調した。 AI企業への変革を宣言する背景には既存事業の伸び悩みがある。これまで重点投資領域に据えていた電気自動車(EV)向け蓄電池や欧州のヒートポンプ式温水給湯暖房機は市場が鈍化。25年3月期までの3年間の中期経営指標の累積営業利益は「未達」の見通しで、停滞が続いている。
そこで、狙いを定めたのがAI関連事業だった。調査会社グローバルインフォメーションによると、AIエージェントの世界の市場規模は24年の約8000億円から30年には約7兆円に成長する。 一方、AIは偽情報や著作権の侵害といった問題も指摘されている。アンソロピックのAIは人間の倫理観に沿う形で学習させる独自手法で安全性を高めているとし、楠見氏は「倫理的なAIを全業務に組み込むには、選択肢は一つしかなかった」と説明した。