心がモヤモヤして集中力が低下する「マインドワンダリング」。その正体とは?
「心がモヤモヤして集中力が低下する『マインドワンダリング』。その正体とは何でしょうか?」 そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健) ● メンタルで集中力が低下する 職場でのストレスや受験勉強など、悩みやプレッシャーで心がモヤモヤし、集中力が欠けてしまうことは誰にでもあります。 このモヤモヤした状態は「マインドワンダリング」と呼ばれることがあり、私たちのメンタルヘルスに大きく影響するものです。 特に、うつ病や不安症といったメンタルの不調を抱えている場合、このマインドワンダリングが発生しやすいことが最新の研究でわかっています。 今回は、マインドワンダリングとは何か、その影響について考えてみましょう。 ● マインドワンダリングとは? 「マインドワンダリング」とは、簡単に言えば「心があちこちにさまよってしまう迷走状態」のことを指します。 たとえば、会議中などに集中しなければならないのに、昨日のことを思い出したり、会議とは関係のないどうでも良いことに気を取られてしまうことがありますよね。 これがマインドワンダリングです。心が現在の瞬間から離れて、過去や未来の思考に捕らわれてしまう状態なのです。 このマインドワンダリングはふだんの生活でも、自然に起こることです。 ですが、うつ病のようなメンタルの不調があると、この迷走状態が頻繁になり、日常生活への影響が大きくなってしまいます。 メンタルヘルスの影響によって集中したいのに心が他のことに飛んでしまい、パフォーマンスが下がるなど、仕事がうまくいかないせいで、さらに余計なストレスを感じてしまうこともあるのです。 そんな厄介に見えるマインドワンダリングですが、人間にとってポジティブな面もあることがわかっています。 ポジティブな思考ができているとき、気持ちが安定しているときのマインドワンダリングは、創造性を高めたり、リラックスにつながります。 一説によれば、私たちが行っている「ひらめき」や「直観」はマインドワンダリングの最中にとくに強く作用するそうです。 ですが、うつ状態などネガティブな状況では逆に、ネガティブな思考が延々とループしてしまうという悪循環になってしまいます。 さらにうつ病や不安など、とても落ち込むことがあると、心は過去の失敗や未来の不安に取り憑かれて、マインドワンダリングの「ネガティブな側面」が強調されてしまいます。 職場の人間関係でストレスが大きいとき、過去にあった嫌なことや自分の将来への不安などをふと思い出してしまうと、集中力がどんどん削られていきます。 この状態が続くと、ネガティブな状況から抜け出せない迷走状態に陥ってしまうのです。 ● 自分を責めず、心に優しく マインドワンダリング自体は、誰にでも起こる自然な現象です。 特にメンタルヘルスが弱っているときは、この現象を完全にコントロールすることは難しいでしょう。 しかし、そんなときほど重要なのは、「自分を労わる」という選択肢を必ず持っておくことです。 「また集中できていないな...」と自分を責めるのではなく、「今、心がさまよっているんだ」とメタ的な視点から自分を認識することで、マイナスのマインドワンダリングから抜け出すキッカケにつながります。 「また心がさまよっているな」と気づいたら、その瞬間をそのまま受け入れてみてください。 何かに集中できないとき、それは自分が何かを抱えているサインかもしれません。 マインドワンダリングはあくまでも心の現象のひとつです。 うまく付き合うことで、日々のストレスや不安を減らし、前向きな毎日を送る助けや、新しいことを始めていくためのモチベーションをも生み出してくれます。 大切なのは、それを正しく認識する視点なのです。 (本稿は、『 頭んなか「メンヘラなとき」があります。』 の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。) 精神科医いっちー 本名:一林大基(いちばやし・たいき) 世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医 1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。
精神科医いっちー