利便性や実用性だけ追いかけても楽しくないんです。XSR700【今週の愛車ピックアップ】
<MYバイクコメントより> ■購入動機・用途・比較車種 還暦ジジイの「上がり」バイクとしての購入です。 実は2年前に、長年連れ添った'92 K100RS 4V Anniversaryから、'21 CRF250 Lに買い替えて、上がりのバイクにしようと思ってました --もう歳だしサンダル代わりの小さいのでいいやと--。でも、大っきいのばかり乗り継いできた私には小さく軽いCRFはONでもOFFでもどんな無茶な走り方しても怖くないので、かえって事故を起しそうで、また大きい方に戻ってきたという前振りがあります。 XSR700は経験者の〆の1台として、そして若い方の最初の大型としても秀逸です。何よりもに「気負わず」下駄として扱える点はCP2を搭載した車種の中ではピカイチだと思います。今回、購入比較対象となったMT07やTenere700も見て、試して素晴らしいなと思ったのですが、いかんせん立ち姿が美しすぎて候補から脱落していきました。 CP2搭載と言う点ではタイミング的にFantic Caballero 700も日本に入ってきたところだったのですが、お値段とアフターサポートを考えると、これじゃ下駄じゃなくSantoniの革靴になってしまうと思い、これも没です。 実はこの時点までXSR700は全く購入候補にも入らずで、今度はサウンドで魅了してくれるMT09と、どこか懐かしいスタイルを纏ったXSR900が候補として浮上してきました。どちらも試してみて素晴らしいと思ったのですが、やはりこれらも立ち姿が完成されすぎで落選です。 CP2のエンジンフィールは好きなのになぁと悶々としていると、今まで気にもとめていなかったXSR700という車種があることを思い出しました。で、よくよく観察してみると回顧主義を煽ったマーケティング戦略も、わざとらしい未完成なデザインも何故かいじらしく見えてきて「ま、コイツでいいか。」と購入に至った次第です。 ■長所 腰上クラシカル、腰下メカニカルで、パーツだけを見ていけばどれもイケメンです。しかし、全体をみれば絶妙にアンバランスに外しているというか不完全。でもこの不完全さが、不思議な魅力を醸し出してます。さすがGKデザインさんの仕事。このセンスには脱帽です。 それに、都内でもまったくと言っていいほど他人と被らないあたりは、不人気車種の鏡だと高く評価できます(褒めてるんですよ)。 見た目の賛否はともかく、CP2は官能的なパワーユニットです。低回転で転がす時も、アクセルを開けて一気に加速させる時も、それなりの速度で巡航する時も、高速コーナーやタイトなコーナー、どんな乗り方、走り方をしてもこちらの要求に応えてくれるだけでなくとても官能的です。 188Kgという車重も絶妙で扱いやすい。ちょっと停める、押し引きするといった降りた後の事が下駄バイクでは重要です。特に私みたいに歳を食うと、筋トレしようが何をしようが年々衰えていくことは身をもって感じているので、軽さは正義と受け止めます。 835mmというシート高も、ヒラヒラ感の源であると考えれば許容できます。腰高でアップライトなポジションを活かし、肩の力を抜いてハンドルに力を入れず、背中を少し丸めて体幹で「後ろ乗り」を意識すればどんなコーナーも思いのままに駆け抜けられます。足は開かず、ニーグリップを外さず腰で曲がるというヤツです。乗り方が既にヘリテイジですね(笑)。こうして乗ってやればハンドリングはいたってニュートラルで、妙なクセは見せません。いわゆる「ハンドリングのYAMAHA」を堪能できます。ノーマルタイヤのロード5も、サスペンションも、相当な無茶をしなければ与えられた仕事をキッチリこなしてくれるので必要にして充分だと思います。 重いと言われるクラッチですが、細工のされた今どきのクラッチからすれば確かにこれもヘリテイジ仕様。でも、本当に重たいクラッチや切れないクラッチを経験してきた世代には「まぁ、こんなもんだろ」の範囲でしょう。