/39 第81回大会(2009年) 九回無安打無得点、延長で涙
野球の怖さが凝縮された試合だった。 2009(平成21)年の第81回大会2回戦。PL学園(大阪)の左腕・中野隆之投手は南陽工(山口)を九回終了まで無安打無得点に抑えた。チームが1点でも取っていれば、大会史上13人目の記録達成だったが、試合は決着していなかった。 延長十回1死後、南陽工の2番・竹重瑞輝外野手に甘く入った直球を左前に運ばれ、初安打を許した。2死後、4番・国弘大介外野手にも右前打され、一、二塁。藤本吉紀捕手がマウンドに向かったが、中野投手は動揺を隠せなかった。 続く高木一人内野手にスライダーを中前にはじき返され、ついに均衡が破られた。水井豊捕手にはスクリューボールを適時打とされ、2点目を失った。 その裏、PL学園は反撃し、1点を返したものの及ばず。南陽工の岩本輝投手が1失点で投げ切った。 完封した1回戦の西条(愛媛)戦から19イニング目での初失点で甲子園を去った中野投手は悔し涙をにじませながら「収穫は分からない。もっとスライダーを鍛えて、打たれない球にしたい」とのコメントを残した。 PL学園は同年夏の全国選手権にも出場したが、中野投手はひじを痛めてベンチを外れた。同大会の3回戦で敗れたPL学園は以後、甲子園から遠ざかる。13(平成25)年には部内暴力で対外試合禁止処分を受け、監督が退任。春夏の甲子園で7回の優勝を誇る硬式野球部は16(平成28)年の夏の大会後に休部となった。=つづく ……………………………………………………………………………………………………… ▽2回戦 南陽工 0000000002=2 PL学園 0000000001=1 (延長十回)